あらたなる たびじ

第14話 未来なんて見えねえよ

《2章 あらたなる たびじ》


■2-1:未来なんて見えねえよ


ゴトン、ゴトンと馬車が揺れる。

荷台には食料、工具、樽。汗と革の匂いが混ざった、遠征の匂い。


玄太は箱の中に隠した“それ”を見つめながら、にやにや笑っていた。


「なぁゲンタ、いい加減教えろ。武器か? 道具か?」

アレルが痺れを切らして聞く。


「まだ秘密だって言ってんだろ。見てからのお楽しみ」


玄太はのらりとかわす。


カザドは馬車の手綱を握りながら、まさかの酒瓶をがぶ飲みしていた。


「グビグビッ……ぷはーーっ!! 旅はこうでなくてはな!」


「おいおい、飲酒運転だぞ?。頼むから横転だけはすんなよ!」


「ガーハッハッハ! ワシに事故はない! 酒が運を導くんじゃ!」


テスは笑いながら荷台の上で肉串を食べている。


その賑やかさの中で、玄太は急に真顔になった。


「――ひとつ覚えておけ」


アレルとテスが姿勢を正す。


「これから先、人間の“貴族”が襲われてる場面に遭遇しても……

 “そいつらの味方をするな”」


「は?」


アレルが眉をしかめる。


「襲ってるのは、間違いなく“道具扱いされたドワーフ”たちだ。

 人間の貴族は――“殺さない程度に”追い返せ」


テスが息を呑む。


「まるで見てきたかのように言うが……何を知っておる?」


アレルも低い声で問う。


「未来が見えるなら説明しろ」


玄太は肩をすくめた。


「未来なんざ見えねぇよ。

だがな、知ってんだよ。このクソイベント」


玄太は拳を握る。


馬車はドッカへ向かい、荒れた大地の中を走り続ける。




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