第13話 運命の天秤


■1-13; 運命の天秤


カンッ、ガンッ??

鍛冶場に火花が散る。


「そこ抑えてろゲンタ!」

「はいよ! ……って熱ッつ!!」

「ガーハッハ! それくらいで騒ぐなゲンタ!」


カザドと玄太。

アレル達が用意した鉱物だけではなく、カザドはドッカから持ってきた鉱物も提供してくれた。

叩き、削り、溶かし、何かを組み上げていた。

酒が抜けてもテンションはそのまま。

まるで子供の秘密基地づくりだ。


アレルは壁にもたれながら腕を組む。


「で、結局あれは何を作ってんだ? 武器? 道具?」

「んー、完成してのお楽しみだってよ」

テスは肉串を口にくわえながら肩をすくめた。


叩く音が止む。

金属の冷える蒸気の中、玄太が大きく伸びをする。


「よし……これで準備は八割ってとこだな」


玄太はアレルを振り返る。


「アレル、このあとドッカへ向かう。馬車と飯の用意しとけ」

「……はいはい、仰せのままに。ゲンタ様のお世話係で光栄だよ」

皮肉を込めて言いながらも、テスと共に表へ向かう。


----


馬車の用意もアレルのおかげでスムーズに事は運んだ。


馬車の荷物が積まれ、最後の樽が括りつけられたころ。


玄太は唐突にくるりと振り返り、全員の前に立つ。


「質問だ。

 --今回のダンジョン攻略、成功するか?」


聞こえる程度にぼそっと口にした……。


次の瞬間

テスとアレルの 頭の中に 声が響く。



----はい



二人は同時にビクリと肩を揺らした。


「な、なんだ今の!?」

「声が……頭の中に……?」


カザドは困惑して目を丸めている。


「ワシには何も聞こえんぞ? 気でも狂ったか?」


玄太はニヤリと笑った。


「これが俺のスキルだ。

 運命の天秤。

世の中の起こり得ること。

それが“はい”なのか“いいえ”なのか、必ず答えが返ってくる」


テスは息を呑む。


「なぜ我らにも聞こえた? 今まで聞こえなかったのに……」


玄太は肩をすくめる。


「パーティー組んだだろ? 共有されてんだよ。便利すぎる仕様だろ?」


その瞬間、アレルとテスの表情が一気に明るくなる。


成功は“確定”

恐怖よりも、期待


「準備は全部整った。

 遺跡の封印を解きに行くぞ。俺たちが行くからには成功確定」


カザドが豪快に笑い、槌を肩に担ぐ。


「意味はよくわからんが久々に心が踊る! 行くぞォ!」


テスは荷物を抱えながら跳ねるように走り、

アレルはにやりと獰猛な笑みを浮かべた。


馬車の車輪が、土を蹴って動き出す。


運命はもう決まっている。

なら――乗り込むだけだ。


「ヒャッハァー!」




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