第7話 うたげ
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■1-7: うたげ
村へ戻ると、アレルは村の代表者たちを集め、
遺跡の入口に刻んだ魔法陣について説明した。
「……ただし勘違いしてはいけない。この魔法は、
俺のレベルより低い存在にしか効果がない。魔王クラスには通じない」
一瞬ざわつくが、すぐに代表の老人が笑った。
「アレル様より強い魔物が来たら、何をしたって無理さ。
その時は逃げればいい。それで村の子どもらが生きられるなら十分よ」
その言葉に、アレルは胸の奥が熱くなる。
横で玄太は腕を組みながら、ふん、と満足げに頷いた。
「よし、なら決まりだ。今日は飲むぞ! 思いっきりな!」
テスが耳をぴくりと立てて嬉々と叫ぶ。
「よく言ったぞゲンタ! 酒だ酒! 酒を持ってこーい!」
村人たちは一斉に沸き立ち、焚き火の周りに食事が並ぶ。
アレルは最初こそ静かに座っていたが、次第に表情が和らぎ、笑い声もこぼれた。
玄太は料理を頬張りながら、アレルにだけ聞こえる声で話しかける。
「――正直な。今の戦力じゃどうやっても間に合わない。
ダンジョンの奥で何が起きてるかわからないけど……遺跡は止まらない。
崩壊は時間の問題だ」
アレルは杯を置く。視線は焚き火の奥、闇の中へ。
「……王都へ向かうぞ」
玄太が言う
「それしかない。情報、そして俺らのレベル上げだ。行かない理由あるか?」
しばし沈黙。
テスは近くで村人たちとどんちゃん騒ぎしている。
黒猫が大笑いしている光景に、誰も突っ込まないあたりがすでにカオスだ。
アレルは静かに立ち上がる。
「……夜が明けたら出発だ」
玄太は肉を齧ったまま無言で親指を立てた。
村人たちは祝福の歌を歌い、焚き火は夜更けまで燃え続けた。
――そして夜が明けた。
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