第6話 初陣…?


■1-6: 初陣…?


戦いが終わり、村には静寂が戻った。

だがその中心で、ただ一人テンションが異常な男がいた。


玄太である。


「ハァ??最高だったな今の! プログラムの世界に転生とかチート確定だろ!!」


腰に手を当て大爆笑している玄太に、村人たちは距離を取りまくっていた。


アレルは剣を鞘に収め、ため息をつく。


「……ゲンタ、落ち着け。戦いは終わったんだ」


「いやいやいや今からがスタートだろ!? むしろクライマックスだろ!?」


テスはお腹を抱えて笑いながらも、ひとこと。


「いや終わったぞ。そなたは何もしておらん」


玄太は一瞬固まる。

──が次の瞬間にはもう別のことを考えていた。


「よしアレル、行くぞ!」


「えっ……どこへ?」


「決まってるだろ、遺跡だよ!」


アレルは目を瞬かせた。

てっきり休息や反省の話かと思っていたのに、

急転直下の遺跡、ダンジョン特攻宣言である。


「落ち着けゲンタ。遺跡は危険だ。魔物が溢れていると──」


「だから行くんだろ? シナリオ的にも今行くのがベストだって。

 それにお前、魔物よけの魔法使えるよな? ちょっと見せてくれ」


アレルは困惑しながらも、手をかざして簡易結界の魔法陣を展開した。


「こうだ。これで弱い魔物は寄らなくなる」


「ほうほう、これがこうで……この符号はトリガーか? じゃあこうすれば……!」


玄太は空中に指で魔法陣を描き、魔法を発動させようとする。


──しかし。


……無反応。


「……?」

「……?」

「…………は?」


玄太はブチギレた。


「なんで使えねぇんだよ!! 俺魔法適正ゼロなの!?」


再び脳内メニューを開く。


【ステータス】

魔力:0


「だぁぁああ!! クッッッソがぁぁ!!」


叫び散らす玄太を横目に、テスが肩をすくめた。


「努力不足だな」


「黙れ魔法チート猫!!」


それでも玄太は即座に切り替えた。

むしろテンションは上がっていた。


「よしアレル! 今から教える魔法陣を覚えろ! コードとしては簡単だ!

 そしてククルカの遺跡の入り口に展開しろ!」


「え? いやそんな急に言われても……」


アレルはポカンとするが、テスは腹を抱えて笑っている。


「ぐっ……はははは……アレル、いったん従ってみろ。面白そうだ」



---


そして遺跡の前。


魔法陣を描き終えたアレルが、玄太を振り返る。


「これで……いいのか?」


「完璧! さぁ起動してみな!」


アレルが魔法陣に手を触れた瞬間──


キィィィィンッ!


風が渦を巻き、光が走った。


次の瞬間、周囲に潜んでいた魔物たちの影が

跡形もなく霧散した。


テスの瞳が揺れる。


「……これは……魔物除けどころではない。悪意あるものすべてを消す……殲滅陣ではないか」


アレルも唖然としていた。


「俺……今、とんでもない魔法を使わなかったか?」


玄太は自信満々の顔で親指を立てた。


「お前が天才なんだよアレル。俺の言う通りにできるならな!」


テスが震えた声で言う。


「……玄太。そなた、レベルは幾つだ」


玄太はメニューを確認して即答した。


「1」


アレルとテスは同時に絶句した。

この魔法陣の効果は──


> 使用者よりレベルが下の“悪意ある存在”を消し去る


「魔法使えたとしてもゲンタじゃ無意味じゃの」



「……じゃあ俺が使ったら……」


アレルが声を震わせて答えた。


「アレルは勇者。レベルは現時点でもすでに常人の領域を越えている……」


玄太は叫んだ。


「だから言ったろ! 俺が最強だって!!」


テスとアレルは顔を見合わせた。





(いや…最凶のまちがいじゃないか?…)



---

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