第5話

 あれ? おっかしいなあ。

 行けども行けども抜け出せないぞ。

 完全に迷子だ。


 地味に壺の重さが気になり始める。

 拾うのをやめて、ここに置いていこう。


 いや、だめだ、持っていく。


 そうだ、リュックに入れよう。


 背負ったキッズサイズの小さなリュック。

 入れたらチャックが閉まらない。


 そもそも全部荷物を出しちゃったし、どうすんのよこれ。

 暑くなって脱いでいた長袖シャツは腰に巻き。

 カメラは手首に下げ、水筒、スケッチブック、色鉛筆は手に持った。




 ……しんどい。

 歩き進めど、公道に出られん!


 海岸線のほうに戻るか。

 確かこっちか? 

 足を引きずるように一歩踏み出す。


 あ、シャツで荷物を包もう。


 もういっそ水筒も画材セットも捨ててしまおうか?


 意識が朦朧とする……



「おおい! 佐野んとこの子じゃないか。こんなところで一人で何してる?」


 ふらふらする頭で声のほうを振り向けば、馬に乗った顔見知りのお爺さんがいた。


 ああ! ウシオジだ!


 こっちの村の人で、トモくんが馬の大先輩として尊敬しているお爺さん。

 昔ながらのやり方で、今も農業に馬を活用し、もうほとんど残ってないスタイルの暮らしを実践している、貴重な存在。


 以前トモくんが質問や用事で会いに行ったとき、私は幾度かついていったから、面識があったのだ。


 馬なのになぜウシオジ? 

 本名かあだ名か、聞きそびれていたなあ。








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