第2話

 空港には、例の馬の人が迎えに来てくれていた。

 顔は全く覚えていないが、会報誌の写真で見てるし、風体が独特だからすぐに分かった。


 トラックでまずは、借り受けて開拓した馬の運動場所へ連れて行ってくれるとのこと。


「どこに泊まるつもりなの?」

「一応テントセットは持ってきていますが。どこそこ海岸の……」

「この時期は普通の人いないよ。不法滞在の男が数人、茂みの奥でそれぞれ密かに何年もゲリラのように潜伏していて。世捨よすびとしかいないから、やめた方がいいと思う」


 ひえええ! 

 なんてハードな情報の先制攻撃だ。


 周りが雑木林で囲まれた、平らに開墾された場所にたどり着く。

 木とトタンと鉄パイプでできた、二畳ほどのテントの形に似た三角小屋がぽつんとあった。


「ここに住んでもいいよ。あっちの作業小屋脇に、手作りぼっとんトイレもあるよ」

と言われた。


 え? ここ? 無理ムリムリ無理!


 車で入って来たから外とは獣道で繋がっているけど、隔離地の風格が半端ない。

 水も電気も通ってないのはもちろん。

 村は遥か遠く、人っ子一人いない。

 怖すぎ寂しすぎ!


 達人向けの物件紹介に面食らってしまった。

 ニコニコと慣れた感じに勧めてくれた様子から推測するに。

 この地にぶらりやってくるアウトサイダーな人たちは、あざーっす! と喜んで、歴代ここを基地にしてるのかもしれない。


 キャンプ初心者の私には、夜を乗り切れる気が全くしない。


 プランMでいこう。


 一応キャンプ道具は持ってきたが、寒がりの私に正月時期のテント暮らしは厳しいんじゃないかと。

 はなから想定していたのだ。

 民宿に泊まって数日で資金が尽きたら、適当なところで帰る。

 こちらが本命プランMinsyukuである。


「どこか民宿に泊まります」

「そっか。ま、とりあえず。村で飲食店やってる僕の奥さんのところへ挨拶に行こう」


 奥さんにご挨拶すると、私の荷物のテントを見て、旦那さん同様。

「私の裏庭か閉店後の店の中にテント張ってもいいわよ」とのお申し出。


 おお、今度はハードルがすごく下がった。


 だがトラック移動中に私の心は、すっかり民宿泊へ傾いている。


 すると奥さんから新たな提案が。


「う〜ん。なんだかこの子、心配な感じがするのよねえ……うん。ウチにおいで。店の斜向はすむかいに母屋おもやがあるから。ウチに住んでもいいよ。トモくん、それでいい?」


 へ?


「ハルさんがそう言うなら、いいんじゃない」


 奥さんの一声であれよあれよと思いがけず、私の居候いそうろう先が決定した。




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