第4集 残暑と、ポツリ胸に生まれた悲しみを

8月30日

『むせび泣く』

哀しさが胸を圧し潰した

喉がつぶれるほどの大声で泣きつづけた

あゝ哀しさよ!怒りよ!胸の慟哭よ!

すすり泣きやがて声ばかりが響き渡る

この心の悲鳴が涙と共にあふれ出す


『秘密』

「秘密だよ」と君は言った

「秘密だね」と僕は言った

ニ人っきりの秘密 嬉しいな

嬉しいね ニ人っきりの秘密

心と心が繋がって

    秘密だよ 秘密だね

誰にも 誰にも知られちゃいけない

二人きりの秘密だよ


8月31日

『8月31日』

夕焼けの空には うっすら 染まった入道雲

楽しかった あなたとお別れ

しんみりとする心に響く ひぐらしの声

チリンチリンとなる風鈴に

まだまだ暑い 残暑 は差し込む

すっかり枯れてうなだれた 向日葵

もうすぐ夏が終わってしまうね

9月の空にはきっと 澄んだ 虫の声といわし雲


『秋の気配』

夕暮れの空

稲穂は重くこうべを垂れて

その上の赤とんぼ

ずっしりと重い実りの秋が

もうソコまでややってきて

物悲しきや虫の声


『9月1日』

夏の花たち

花壇から飛び出した花達は

笑っている様に見えた


暑い アスファルトも

強い日差し も少ない雨も

お構いなしに花を咲かせる


なんて強いんだろう

なんてたくましいんだろう

なんて美しいんだろう


無垢な強さがそこにはあった

生命力がそこにはあった

暑い季節を生き続ける

潔さがそこにはあった


『口づけ』

彼女の髪に口づけて

彼女の肌に口づけて

彼女の額に口づけて

彼女の頬に口づけて

彼女の心に口づけて

彼女の骨に口づけて

彼女の墓に口づけて

彼女がいない世界に

ただ涙を流し続けた


9月2日

『冬の香りと煙草の煙』

吐き出した息が白く立ち昇る

雪の冷たさと水仙の香り

凍った息と煙草の煙

冷たさと熱が入り混じり

渦を巻き絡み合い

寒空に溶けてゆく

あゝこの凍てつく空よ

灰色の空よ

心の中に渦まくは冬の息か煙草の煙か


『絶望』

行き場の無い道を一人歩く

どうすれば良いのか解らず

心は絡みついた

アリアドネの糸の様

この苦しい道を

光のない道を一人歩く

いつかこの闇から出る事を

ただ切に望む…


9月3日

『夜中の電話』

月明かりばかりが

泣きたくなる様な晩

思い出した様に電話をかけ

こんな時間に一体誰が

電話に出るといふのだろう


ただ君の声が聞きたくて

辛くて辛くて泣きたくなって

きっと嫌われてしまうだろう

こんな寂しい夜に

たった一人でいるのが

あまりにも辛くて


電話の音ばかりが響き渡る

冷たい夜の底


9月4日

『理想と現実』

私達は叶わぬ夢を抱えて生きている

心にあるのはいつも美しい理想の姿

ジレンマに飲み干され心はいつも

哀しみに昏れている

あぁ、夢よ理想よ私の心よ!

必死で現実の海を泳ぎ

力の限りあがき続け

現実は無常で…だがその理想こそが

私を活かし続けるのだ


9月5日

『乱視』

僕の世界は いくつにも重なって見える

それは確かに視界を歪めこの世界を

見えにくくしているのだろうけれど

いくえにも重なる月を見て

決して悪い事ばかりではないと思う

美しいもの幾重も重なって見えるのだから


9月6日

『小さな悲しみ』

ポツリ胸に生まれた悲しみを

抱きしめながら生きてゆく

胸に生まれた悲しみは

小さくふるえて泣いていた


きっと私はこの小さな悲しみを

愛してあげなくっちゃいけない

小さな小さな 悲しみは

たった一人で泣いている


ポロリとこぼれる涙に愛

傷ついてしまった心に絆創膏

悲しみと手をつなぐ私


9月6日

『引き出しの中の記憶 』

引き出しの奥の 大切な記憶

古びた ポラロイドは

あの日の 鮮やかな記憶を

切り取って大切に保管していた

もう二度とあなたの姿を

見るまいと鍵をかけた 引き出し

記憶はあの頃のまま

鮮やかにまっすぐ瞳が私を見る

泣いてしまうかと思っていた

歳月は悲しみを美しい記憶へと変えた


9月7日

『母の子守歌』

眠りたくないと駄々をこねる 幼子の

頭を撫でて 抱きしめて 子守歌を歌って

優しく幸せな 夢の中へ 誘ってくれた母

眠りたくないと ただをこねる 幼子は

今も私の胸の内にいる私はとっくに

大人になってしまったけれど…

幼い心を抱えたまま布団の中で

今日が終わるのが悲しく眠ることがない


9月8日

『飛べないカモメ』

空は何処までも広がっている

海は永遠の向こうへと続いている

私は飛べないカモメ

空の向こうにも

海の彼方にも行けやしない


『恋するペリカン』

ボクは恋するペリカンだ

かわいいあのコにプレゼント

だけど哀しい 哀しいな

かわいいあのコは知らんぷり

ボクは哀しいペリカンだ


9日 9日

『あなたにいてほしい』

どうにもならない事ばかり

いつも空回りの日常で

それでもあなたがいてくれて

あなたが私に言った一言

「あなたにいてほしい」

その一言で 私は今日も生きてゆく

弱い弱い私だけれど

あなたがそばにいてくれて

それだけでほんの少し

空回りの日常が優しくなる


『逃げ出したカニ 』

小さなパックに詰められて

売りに出されたスーパーのカニ

こわいよボクはどうなるの?

買われてスーパーの駐車場

ボクは必至で逃げ出した

ビニール袋をハサミでやぶり

すたこらサッサ!みぞの中

こんにちはザリガニさん

はじめまして!陸の世界!


9月10日

『月の風』

月の晩に一人歩く

強い風が吹いて

雲を吹き飛ばす

暗い心もかろやかに

私の心は悲しみから

解放されて あの

高い月まで登っていくのだ


『相互フォロワー様』

あなたに会った事はないけれど

大好きだよって伝えたい

うまくいかない日常で

あなたの事を考える時間がとても幸せ

会いたいとは思わないけれど

ずっとずっとあなたの日常が

穏やかに流れていく事を望んでいる

SNS の中でだけの関係だけど

あなたの事が大好きだよ

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