第5集 彼岸花の咲く季節に

9月12日

『重たい体を脱ぎ捨てて』

やっと解放された!

煩わしいことから

私は自由だ!

もう何も悲しむ事も

苦しむ事もないのだから

ふわり花のような気持ちで

ふわり雲のような気持ちで

何処にだって飛んで行ける


葬式の鐘が鳴る

青い空に白い煙がたなびいて…


9月13日

『涙雨』

さようなら!曇天の空の下

 涙の別れになってしまったね

雲も君も私も 泣いているよ


涙が雨と 入り混じって

 もうどこまでが

  私の涙なのかわからない

あゝ涙の雨の日にお別れなんて


君がいなくなってしまった

空を見上げれば

泣きはらした目に

      映る虹…


『最後のデート 』

もうこれで終わりにしよう

そう思った二人のデート

最後の場所はナイトシアターで

流れる映画は二人の時間を

想い出して

揺れる心と悲しみと切なさ

ノスタルジーと恋心

さようならが言いたくなくって…


9月14日

『おはよう』

おはよう世界

ゆっくりと花びらが開いて

僕は初めて世界を見る

仲間たちがみんな

キラキラと輝いて見えて

初めて見る世界は

どこまでも 優しい

目を覚ませば

幸福な今日が始まるんだ

僕は花となって

この世界に生まれてくる

おはよう初めて見る世界


『空模様』

激しいスコールのような雨風は

あっという間に陽が差して

空に天使のはしごがかかっている

洗われた空気はどこまでも 透明で

雨粒があちらこちらで光を反射し

新しい世界が生まれてくるのだ

鮮やかな世界は

沈んでいた心を洗い流し

空模様の様に晴れやかな心に虹がかかる


『メランコリーの海』

寄せては返す波に映るサンセット

もう遠い日の様な気がする

あなたと歩いた浜辺を一人歩く

波の音が優しくて沈む太陽に

もう少し待ってと言いたい


薄くれないに染まる空

ポツリポツリと灯る明かりが

日々の営みを思い出させてくれる

うっすらと涙で滲んで

溶けてゆく夕焼けの空

足跡を 波が消してゆく


9月16日

『因果応報』

因果応報めぐりゆく

悪しき心は全てを蝕み

悪因悪果 自業自得

必ず悪行の報いうける

のだろう……


仏陀の心で因果応報

救済はその人自身を

蓮の花へと導く言葉


嗚呼美しき浄土へと

全ての修羅を菩薩へ変えて

めぐりゆくは因果応報

三千世界のこの果てに


『月光』

やわらかな光は

全てを包み込んでくれる

静な夜ただ月明かりだけが

私を見てる。


泣いても良いだろうか……

頬杖をついて眺める窓の外

月見草が一輪咲いていた。


9月17日

『贖罪』

聞いてください!聞いてください!

わたくしは罪を侵しました。

何もかもが、崩壊してしまったのです!

生きていれば、ほんの少しの

エゴも、御座いましょう!

唖々でも、わたくしが全て、

悪いので御座います。

どうか、どうか、罪を償わせて、下さいませ!


『レクイエム』

死を悼む歌がきこえる

祈りの歌を捧げる

永遠の祈り

あなたの愛をやすらぎを

哀しみよ苦しみよ

どうか安らかなる

祈りの灯りを

我らが苦痛を癒したまへ


やわらかな歌声が

死者の魂を穏やかに

夜の海の静けさの様に

あなたに捧げる鎮魂歌


9月18日

『遺伝子』

君と僕との差はほんの僅かな

塩素系列の差にすぎない

延々と続く生命の微かなバグさ

遺伝子のパズルは

何度も何度も組み替えられて

僕と君の違いとなった

だがそこに湧き上がる想い

一体これは何のバグなんだい

君が好きだ君を愛している

君の為ならこの世界を

終わらせる事すら出来るのに


『SNS 上にて』

久々のあなたの一言が

何よりも嬉しかった

アカウントはすっかり

更新が止まってしまって

あなたに話しかける機会は

ずっとずっと失われていた

あなたの事が好きだよと

何度も伝えたつもりだけれど

きっとあなたは私の事が

見えてなかったと思う

それでもたった一言

あなたの呟きが嬉しかった


9月19日

『憤怒』

怒りで頭が白くなる

心の中がマグマの様に

煮えたぎって噴き出して

地獄の炎が燃え上がる

心の中の怒りよ憎しみよ増悪よ!

激しさと悲しみと

マグマの様な我が血潮よ!


9月20日

『都会の片隅の晩に』

都市の灯りは決して

消えることがない

深夜の電車の走る音

ショーウィンドウの明かり

ネオンサインと街灯と

騒々しさと眩しさに


宵闇は都市そのものの

懸想に飲み込まれて

眠ることのない夜に

ため息と涙が滲む


コーヒーを1杯

ブラックのまま飲み干して

眠りたくない街で…


9月21日

『腐敗』

死に絶えた者たちを

  この世界に還元する


命を分解し喰いつくし

新たなる生命へ

  水へ空へ溶けてゆく


原子へ元始へと還ってゆく

死は恐ろしく おぞましく

    全てを飲み干しす

生は死に 腐敗し腐乱し

この世界へと還ってゆくのだ


『送信』

愛を伝える手段に

言葉ほど強いものは

あるだろうか


たった短い 一言でもいい

あなたに愛を伝えたい

そう思って手に取ったスマホ


あゝそれなのに!

たったわずかな短い言葉を

どうして書く事ができよう


あなたに対する愛と誠実さを

メールに込めてタップする。

それだけの事に手が震えた


9月22日

『夜明けの月』

寂しい月が

空に溶けていった

青い空に ぽつり

すっかり白く薄くなって

雲のまにまに浮かぶ月は

霞んでもう

どこだかよくわからない

寂しい月はただ一人

佇む私のようだった

星はすっかり消え失せて

東の空に輝く太陽

ギラギラと眩しく

月は泣いてる様だった

青い空にのまれて

月は消えてしまった


『鵺』

鵺の正体を知っているかい

トラツグミという名の小さな鳥だ

恐ろしい怪物の姿で描かれる

鵺という名のあやかしは

小さな愛らしい鳥なのさ


幽霊の正体見たり枯れ尾花

恐怖は絶えず人の心に宿りけり

闇は恐ろしいものを創り出す

恐怖心というのは心から生まれる

……本当の深淵は人間の心の中


9月23日

『ぬいぐるみ』

ふわふわのぬいぐるみは

愛情のメタファー

不安や悲しみを吸収してくれて

優しく私を抱きしめてくれる

心の中にあるのは幼い子供

その小さな子供が

抱きしめてって泣いている

私に代わってぬいぐるみは

小さなその子を抱きしめてくれる

ぬいぐるみを抱きしめている様で

実際は抱きしめられているのだ


『彼岸の岸辺』

彼岸に咲くその花は

あの世とこの世を

橋渡ししているといふ


あゝ紅き曼珠沙華の花よ

どうかその根が

あの世まで繋がっている

といふのなら

私の声をあの人に

届けてはくれぬだろうか


会いたい逢いたい

現世ではどうにも手の届かぬ

この想いよ!


いずれは逢いに行きましょうぞ

赤い花のその先に

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