第2話
「っ!?」
「ん……」
唇が触れ合うだけでなく、舌も絡ませ合う。
暫くして唇同士が離れる。唾液が糸を引く。
「……」
「……」
「「……」」
両者無言。
暫くして少年――ホウガが言葉を絞り出す。
「俺……初めてだったんだけど」
それに少女――ルリナはいたずらっぽく笑う。
「あらお揃い。あたしもよ。でも効果はあったでしょう?」
「あん? あ……」
ホウガは自分の体の変化に気づく。
先程までは死に近かったのに活力が戻って来た。
今なら立ち上がれる事も出来そう。
それと同時に疑問が湧く。
「一体何をしたの?」
「あたしの生命力を分け与えたの」
「そっか」
その説明に納得するホウガ。
そんな彼にルリナは付け足す。
「……まあそれ以外も色々あるんだけどね」
「色々が気になるんだが……」
「ええ。わかってる。詳しい説明をしたいけど……ここじゃ話しずらい」
「まあ確かに」
ここは
それを見てホウガは思い出す。
「あ、そうだ!」
「どうしたの?」
「やる事があるんだ。それをやったら話せる場所へ行こう」
「それは任せるけど、何をするの?」
「ちょっとね」
ホウガは悪そうな笑みを浮かべて立ち上がる。
そして、作業を始めた。
………………
…………
……
暫くしてから作業を終えて
「う~ん……」
伸びをするホウガ。
服はボロボロなのだが、替えはないうえ、あったとしても更衣室もないのでしょうがない。
そんな彼に
[窮屈ね。どうにかならない?]
彼の手にある包みに入っている剣――ルリナだった。
本当は人間の姿で出ようとしたのだが、見た目と服装が目立つので剣形態になり布で包んでいた
[せめて包みは外してくれない?]
ホウガは言葉に出さず心の声で返答する。
[暫くは我慢してくれ。武器は表立って持ち歩けないんだ]
[もしかして銃刀法?]
[ああ]
銃刀法。正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」。
銃砲や刀剣の所持・携帯を禁止する法律である。
とは言え今の時代は
許可証があれば持ち運んでいても捕まる事はないが、バッグなどに入れて目立たないようにしなくてはいけない。しないと良くて注意、最悪補導される。
[包みはどうにかならない? うっとおしい]
[少なくとも今は無理。我慢して欲しい]
[……わかったわ]
ルリナは不承不承に納得する。
そして、別の話題にする。
[それで? どこへ向かっているの?]
[……。俺の家。落ち着いて話せるから]
[ふうん]
答えるのに少し間が空いたのにルリナは反応。
問いかける。
[どこか寄りたい場所があるの?]
[……別に後で良い]
[あるのね。どこに寄りたいの?]
ややあってホウガは答える。
[今日の戦利品を売る場所]
[ああ……]
今日の戦利品とは彼が背負っている鞄の中身だった。
だが、彼らをルリナが殺し、その戦利品を手に入れたおかげで結構な収入になりそう。
とは言え……
[表立った場所じゃ換金出来ないから裏で換金する]
[裏の知り合いでも居るの?]
[まあね]
説明に納得する。
(そういえばナマモノもあったわね)
なのでリルナは決める。
[……はあ。もう少しだけ我慢してあげる]
[え?]
[あたしに構わず行きなさい]
[そう? じゃあ遠慮なく]
とは言え窮屈な思いをさせているのには変わりないので。
[……甘い物でも買おうか?]
[人を食いしん坊だと思っていない?]
[じゃあ要らない?]
[要る]
………………
…………
……
そうして
店名は「花鶏」。
[ここ?]
[うん]
実は包みの隙間から外を見れるルリナ。
店の外観を見る限り……
[骨董屋?]
[こっちが本業らしいよ]
売上はまあまあだそうだ。
[しかも準備中の札が出てる]
[これがそういう取引するってサインだから]
ホウガは店の扉に手を掛け開ける。
(自動ドアじゃないのね)
ルリナはそんな事を思いながら店内を見渡す。
絵画、壺皿、仏像などが所狭しと置かれている。
(へえ。どれも良い物ばかり)
そんな事を思っていると、店の奥から人が出て来た。
それはサングラスをした女性。萌え袖の服を着ており手が見えないのが特徴的。
「誰かと思えばホウガじゃない。どうしたの?」
「換金したい物があって来ました。ジェーンさん」
その名前を聞いたルリナはホウガに訊ねる。
[この人が?]
[うん。俺の知り合い。ジェーン=ドゥ]
[絶対偽名でしょ]
そんな言葉にホウガは内心苦笑していると、ジェーンが聞いて来る。
「それで? 換金したい物っていうのは?」
「これです」
ホウガが背中のリュックから出していくのはアクセサリー。
「それとこれが本命です」
そして最後に出したのは液体の入った容器。
その中には人の眼球が幾つも入っていた。
「……へえ」
それらをジェーンはじっくりと見始める。
そんな様子にルリナがホウガに聞いて来る。
[こんな眼がお金になるの?]
[なる]
これらは
金目の物を剥ぎ取り、眼球を抉り鮮度を保つための容器があったのでそれに入れて持って来た訳だった。
[【リガド】だからな]
[人工の魔眼ね……]
魔眼。
何らかの異能を持った眼の事。
邪視や瞳術とも呼ばれ、ケルト神話のバロールやギリシャ神話のメドゥーサが有名であろう。
異能が一般的になったこの時代、様々な魔眼が確認されている。
そんな中である天才……否、大天才が作り出した発明の一つが【リガド】。
眼にナノマシンを投与し、適合すれば手に入る。
非異能者が異能者になる方法の一つ。
最も手軽であるがリスクがある。
一つが適合に失敗すれば死ぬ。処置が速ければ助かるが、良くて失明は確定。
二つ目が……
「青と緑ね……。赤と紫はないのね」
「はい。残念な事に」
「ま、その二つはレアだし、何が出るかは運次第だものね」
異能を得られたとしてもランダムである事。
狙った異能を習得できる可能性は限りなく低い。……というか零に近い。
だが、それをどうにかする方法がある。
それが眼球移植。
だからこそ高値で取引されている。
とは言え、眼球移植なんて余程の名医でないとできないうえ、出来たとしても適合率は普通のナノマシン投与よりも低いが。
それでも力を求めやる人は多い。……表にも裏にも。
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