第Ⅵ章

1945年2月太平洋の小さな小島での戦闘に備えていた。 我が艦隊の猛烈な艦砲射撃が終わり上陸用舟艇に乗り込んでいる最中こんなことが聞こえてきた。新兵の奴らが「日本軍の奴らは事前の艦砲射撃でもう一人も残っていないだろ」と。俺は全滅しているなんてことはないとは考えてはいたが、最初の攻撃さえ乗り越えてしまえばあとは楽だと考えていた。なぜならこれより前に行われたグアム上陸作戦にて日本軍とは交戦経験があり、今回も同じ戦法を取ってくるだろうと考えていた為だ。 しかし、予想とは裏腹に上陸時の攻撃がなかった。前に交戦したときはどこかしこから日本軍の攻撃が飛んできたのに。その為、俺は本当に全滅してしまったのかと思ってしまった。 だが隊が海岸からの前進をした瞬間、そんな期待は裏切られた。 弾が俺の顔の横をかすめていった。俺は本能的に伏せた。先行していた仲間は次々倒れていった。 死んでいるかはわからないが、おそらく全員死んでいるだろう。キツツキの音、そして重砲であろう砲弾の着弾音があたりに響いていた。隣で仲間が頭を少し上げた瞬間、甲高い音が聞こえ、死んだ。 そして銃弾と砲撃音の混ざった音が耳の奥まで響いてきた。 上陸時のお気楽な考えをしていた自分をぶん殴りたい気分だ。俺は残った仲間と協力し前進を試みた。 バンカーを潰し、仲間の前進を助けるために。 銃砲弾の雨あられの中、走った。弾が当たらないことを願って。だがそんな願いは戦場では中々叶てくれない。 走っている途中で俺は背中に激痛が走り、地面に倒れた。砲弾が俺のすぐ後ろで炸裂したのだ。言い表せない激痛が全身を巡った。痛い、ただそれだけ。意識が遠のくのを感じる。 いやだ、死にたくない死にたくない。 体から熱が抜けていくのを感じ死が近くなるのがわかる。 こんなところで死ぬのはいやだ。 母親にまだ何もしてやれていない。 こんなとこで死んでしまっては会うこともできない。 後悔がいっぱいだった。 次第に体から力も抜けていった。 誰か助けてくれ、頼む、死にたくない。死にたくない。 死に…たく…な……い…。

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