第Ⅴ章

1944年8月俺たちレジスタンスはパリに駐屯しているドイツ軍へ攻撃する機会を伺っていた。 連合国による北フランス上陸作戦が成功し、現地レジスタンスとも協力し橋頭保を広げているようだ。フランス解放の時は近だろうとフランス人たちは肌に感じていた。俺たちは計画を練り、仲間からの連絡で連合国側の将軍と接触、パリの解放を要請してくれたそうだ。俺たちの士気はますます上がった。 数日後武装蜂起を決行した。ゲシュタポ本部・国防軍司令部を襲撃し仲間の解放や武器や軍の機密情報など奪い、最初の攻撃は上手くいったが、ドイツ軍の奴らもすぐ体制を整え反撃してきた。蜂起をして数日、連合軍の到着があと三日と無線で通達があったこの日も俺たちは戦っていた。 しかしその日は様子が違った。いつもなら少し攻撃をすれば奴らは撤退していったが、そいつらは粘り強く抵抗してきた。そいつらは戦車まで持ち出して、俺たちの班は圧倒的な火力を前に簡単に壊滅した。 俺と他数名でバラバラに逃げ抵抗を続けた。追撃してきた奴らを始末し、そいつらの正体を確かめた。そして俺たちと交戦していた奴らの正体が武装親衛隊の奴らだと分かった。俺は仲間たちとの合流地点に到着したが誰もいなかった。おそらく全滅したのだろう。 少し待っても誰も来なかったため俺はアジトに向かった。 しかし、その途中に武装したゲシュタポの巡回に見つかり、逃げ切ることができず捕まった。それからは拷問まがいの尋問を受け、他のレジスタンスのアジトの場所や構成員の数を問いただされた。殴られたり蹴られたりの行為を一心に受けも俺は口を割らなかった。 そいつらの顔を見たとき感じた俺たちに対しての軽蔑の目、恨みや怒り。 俺が全く口を割らないことに業を煮やしたそいつらの上官らしき奴が、これ以上は意味がないと分かり俺のこめかみに銃口を押し付け、引き金を引いた。 パリの開放を見ることなく暗い路地裏で一発の銃声が響いた。

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