第Ⅶ章

俺は本部への伝令として森の中を歩いている。米軍を警戒しながら。 1945年3月米軍が沖縄へ侵攻を開始した。本土へ送られた島民もいたが、無事にたどり着けているだろうか。まぁ俺が生き残れるかどうかわからないが。上陸初日から米軍の激しい攻撃に合い、仲間の半数が死んだ。 隊長さんは状況を司令部に報告し、援軍を要請するよう俺に頼んだ。そうして司令部に向けて出発した俺だが、それも簡単ではなかった。 海からは砲撃が昼夜とはず行われ、米軍機からの爆撃や機銃掃射昼夜問わずしょっちゅう行われた。そのせいで落ち着いて飯を食ったりまともに寝ることすらできない。数日たったある日の夜、司令部まであとちょっとのところで海の方から何か爆発音のようなものが響き、赤色の閃光が上空に向けて放たれていた。直後今までより少し大きな爆発音が聞こえた。俺はあまり気に留めず司令部を目指した。司令部につき報告と援軍の要請をし、少し休憩をしてから出発した。 司令部からの報告を自分の隊に届ける途中、夜空の一部が昼間のごとく明るくなっていた。おそらくだが敵の照明弾と対空砲だと思う。こんなところから見えるくらい撃っているなんて、きっとわが軍の大量の爆撃機が飛んできているのだろう。あんな戦力が残っているなんて流石わが軍と思ったのもつかの間、自分の隊までもうすこしのところで運悪く米軍に見つかり子供が逃げ切ることもできず捕まってしまった。 そして自分がこの先にいる敵部隊の一員とわかると日本語が喋れる米兵に「君の部隊は包囲されている。このままでは我々だけでなく君の仲間も殺すことになってしまう。そうなる前に降伏するよう言ってきてはくれないか?」 俺は迷った。降伏は大人の兵隊さんたちが許さない、だけど仲間は助けたい。俺は悩んで末に白旗を持ち自分の隊に降伏するよう説得に向かった。俺は隊がいた塹壕に向けて歩いた。 その瞬間一発の発砲音が響いた。体の力が抜け膝から崩れ落ちた。撃たれた、それも味方に。 苦しさはなかった、ただ死にたくないと思った。 地面に倒れ……体から力が抜けていく……無性に眠い……意識が遠のく……おかあちゃん……ごめん…

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ある男達の物語 @aktuki45

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