第Ⅱ章
1939年5月大西洋上を航行中の輸送船団へ一本の無線が入った。 それはドイツが我が国に対して宣戦布告したという連絡だった。本国からは早急の帰還命令が下された。 翌日我々は、本国へ寄港するための最短経路を策定し、プリマス港へと進路を取り、敵に警戒しつつ帰路へついた。道中にアメリカ行きの本国の輸送船団と遭遇し、暗号書と通達された哨戒網の報告を受け、護衛の駆逐艦を二隻合流させ、その場を後にした。その後は特に危険もなく航海を続けていた。 その夜、 本国から通達のあった哨戒網まであと100m付近で突然の轟音と水柱が上がった。 それは敵に補足されているということを我々に知らせた。護衛の駆逐艦は先頭と最後尾に配置させておりその中間付近にいる我々に追いつくのは時間がかかる。 見張りに「方位と距離は!!」「左舷後方!距離2000に敵艦!」その報告を聞き、我々は本国と護衛の駆逐艦へ敵艦発見の報と救難信号を発信した。 直後船が激しく揺れ、轟音と共に爆発音が響き渡る。 砲弾が命中…したのだろう。 私は即座に被害箇所の報告を聞いた。 左舷機関室浸水と第一船倉での火災、電気系統の損傷が報告された。 私は顔を上げ艦橋からの景色を見た。それは地獄そのものだった。甲板は火の海になっており、船倉通じるのハッチが爆発によりひしゃげており、船倉からは火柱が上がっていた。 船倉には石油を満載していた為、いつ爆発するか定かではなかった。私は船の放棄を決めた。 「総員退艦!!」 私は艦橋乗組員に艦内にいる負傷者を連れ急いで退艦するよう指示した。 私も甲板にいた乗組員に退艦を急がせた。 しかし、乗組員のほとんどが退艦する前に激しい爆風と喉がただれる程の熱波と激痛が全身に走り、それを冷ますかのような冷たい感覚を感じた。 かすかに残った意識で周りを見た。 水中には沈んでゆく船とその破片、そして乗組員だったものが漂っていた。 そして私の意識は船と共に海底へと沈んでいった。
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