ある男達の物語
@aktuki45
第Ⅰ章
俺は今トラックに揺られながら前線に向かっている。 1940年5月、我々の小隊はアルデンヌの森をぬけフランス国内への進軍を続けていた。我々の士気は先のポーランド戦にて高揚しており、大国フランスに臆することのないほど高まっていた。 しかし、俺は言葉にできない不安に支配されていた。 それはのちに現実となった。 フランス国内へと入ったがフランス兵と交戦することは全くなかった。俺は疑問に思い仲間に事情を聞き、隊長が答えてくれた。「フランス軍どもはほとんどマジノ線に張り付いているからこっちに戻ってくるには時間がかかる」だそうだ。仲間のほとんどは交戦はまだまだ先だなと安堵する者もいた。隊列が市街地に入った。 そして家の曲がり角を曲がった途端、瞬間的な破裂音と共に先行していた味方輸送車に被弾、爆発音と共に炎上した。 車両は止まり、隊長からの降車の命令が出た。俺たちはすぐに輸送車を降り戦闘配置についた。 被弾した車両から運よく生き残った奴もいたが火だるまになりながら断末魔を上げる仲間、そして人と鉄が混焼けたような今後嗅ぎたくもないにおい。その曲がり角の奥、民家の影からこちらに砲口を向けている巨大な戦車が見えた。 俺たちは周りを警戒した。戦車が一両でいるのが不思議だったからだ。 部隊の半数を周りの偵察に出した。 残った俺たちはあの戦車をどうするか考えた。 俺たちの小隊には幸か不幸か対戦車砲を備えていたため、輸送車にけん引していた砲を取り外し、直ちに反撃できるようにしていた。隊長は悩んだ末、反撃の命令を出した。 俺達は曲がり角から砲を設置後、砲弾を装填、照準を合わせた。 機銃を撃ってくることもなく停車している戦車に照準を合わせるのは容易だった。 「撃てぇ」 初弾を発射し、命中、甲高い音を鳴らした。 はじかれたのだ。 俺たちは困惑したが、隊長からの命令に従い打ち続けた。 しかし弾は貫通することはなかった。 隊長は仲間の一人に偵察に行った奴らを呼んでくるよう伝令に出した。 その瞬間、敵戦車から砲撃を食らい一瞬激しい痛みが全身に走り…音が消えた。
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