第4話
怪鳥と飛び立ちすぐ、ドラゴンの姿が見えた。
ドラゴンに乗っていた骸骨はルミーネに気づく。
「あらルミーネじゃない。あなたが私の前に現れるなんて珍しい。あなたの身体くれるの?」
「骸骨の魔女…。なんでこんな辺境の地に来たの」
「な〜にそのよそよそしい呼び方は。カラーミアって呼んでよ。…そうねここに来たのはそろそろ5年前のあの子の身体を貰いに来たって言ったら?」
ルミーネはゆっくりと杖を構える。
「やっぱりあなたの所に居たのね。あの魔力量の子が魔法を使えばすぐ気づくと思ったのに全然反応しないの。魔女が匿っていたのなら納得だわ」
「あんたが私の魔法を耐えれたことあった?また何百年も眠りにつく?」
カラーミアは骸骨の顎をぐらつかせ笑う。
「最初に見つけたのは私なんだし譲ってくれてもいいじゃない」
「私は別にあの子を狙ってはいない!あの子は料理人になるの!」
「な〜にそれ。ほんと相変わらず口を滑らす子ね」
「……」
ドラゴンは徐々に高く飛んでいく。それに気づいたルミーネは怪鳥に合図する。
「あの子の身体なら100年は持ちそうよね」
「……」
─突如カラーミアの前に小さな火種が現れる。それに気づいたカラーミアはドラゴンを操り距離を取る。
─ゴオン!
火種は凄まじい音を立てて爆発する。
炎はドラゴンの翼を少し燃やす。
「そんなに黙ってたら何をするかバレバレよ?」
「あんたともう話す気がないだけよ」
次の瞬間、ルミーネと怪鳥の姿が消える。
カラーミアは取り乱すことなく結界を上に貼る。
そのバリアに直撃するように鳥のクチバシが弾かれる。
「あなたの攻撃はワンパターンね。いくら早く見えなくなろうとも攻撃場所が分かれば意味がないわ」
カラーミアは骨の手を潰しながら合わせる。
ルミーネは急いで距離を取ろうとするが少し行動が遅かった。
「…っ!」
背後から出現していた骨の剣が彼女の肩と背に突き刺さる。
その衝撃で杖を落とす。
「まだまだいくわよー!」
ルミーネの周りの空間から骨の剣が無数に現れる。
「…くっ…鳥ちゃんお願い」
右肩と腹を抑えながら前屈みになり、怪鳥の毛にしがみつく。
怪鳥は再びすごい勢いで移動を始める。
しかし、その移動の際、怪鳥の翼に骨の剣が刺さっていたようで、先ほどの高速移動は出来なくなってしまう。
ルミーネもまた傷を負い、血が滲む
「あら全然早くないわね。これでおしまいかしら?」
怪鳥は力を無くしゆっくりと高度を下げていく。
カラーミアはその上に大きな骨の剣を出現させる。
ルミーネは意識が朦朧になりつつも左手をカラーミアに向ける。
「…何…勘違いしてるの?私の…勝ちよ…」
「あはは…はっ…は?」
その勝利宣言にカラーミアは嘲笑う。嘲笑おうとした。骨の顎が動かない。
それどころか顎がミシミシと音を立てて潰れる。
ルミーネは一番最初の高速移動ですでに空中に魔方陣を描き終えていた。
「…【月砕流】」
どこからか細い光の筋がカラーミアの身体を貫いた。
焼けるような熱さに叫び声を出そうとするが、身体はどんどんと潰れていき声は殆ど出せない。
徐々に光の筋は天から凄まじい量が降り注ぐ。
「…ぁ…ぁ」
「…当分目覚めないでよ化け物」
カラーミアはドラゴンと共に塵となって消えていった。
ルミーネは鳥の傷を治し、近くの森に降りる。
怪鳥から力なくずるずる落ちたルミーネはそのまま地面に横になる。
「これは当分無理そうかな〜…。でもあの魔女が消えたならいっか…」
そのままルミーネはゆっくりと眠りについた。
しかしその目が覚めるのは案外と早いものだった。
◆◇◇◇
次にルミーネが目を覚ましたのは怪鳥の上であり、シュラの腕の中だった。
辺りは少し日が昇りつつある。
「…シュラ?」
「ルミーネ!よ、良かった…今は喋るな。もう少しで家に着くから」
ふと肩を見ると包帯が巻かれている。
それから程なくして家に降りたった。
「ありがとうな!今度いっぱい餌用意しとくから!」
怪鳥は嬉しそうな声を上げると、またどこかへ飛び立っていった。
シュラは急いでリビングに引いてある布団に急いで寝かせる。
「ま、魔女って普通の消毒液でいいのか?あーもっと文字の勉強しとくんだった!」
立ちあがろうとするシュラの手をルミーネは静かに握る。
「シュラ…居てて…」
「大丈夫だ居てるから、待っててくれ今ご飯を─」
「違う…居て…手を握って…それで大丈夫だから…」
「そんなんで良くなる─」
「なるから…魔女を信じて…」
その言葉を信じて眠っているルミーネの手を両手でしっかりと握る。
震えているシュラの手を愛おしく感じつつもルミーネは眠りについた。
◆◇◇◇
目が覚めると夜中だった。家の電気を点けていないせいで真っ暗だ。
横を見ると手を握ったまま俯いて寝ているシュラの姿があった。
「座ったまま寝るなんて器用だな〜」
ゆっくりと手をどかし身体を起こすと、シュラをゆっくりと横にさせる。
肩の包帯をゆっくり外していく。
穴が空いていた肩は殆ど塞がっていた。
「やっぱりシュラの魔力は凄いな〜。でも流石に貰いすぎだから返しておこう」
シュラの胸に手を置き、目を閉じる。
ほんの少しだがシュラの血色が良くなった。
「う〜んお腹が空いた〜」
冷蔵庫を開けるとシュラが作った料理が冷えていた。
「ラッキ〜これを貰おう」
料理を両手で持ち、軽く念じる。
─ドオンッ!
「な、なんだ⁉︎」
シュラは飛び起き、辺りを見渡す。煙が徐々に晴れていくとその中央にはルミーネが炭だらけになっていた。
「…お前…」
「指怪我しちゃって〜もう一度握ってほしいな〜なんて」
シュラはそれ以上何も言わず、悲しそうな哀れみの表情を浮かべた後、そのまま布団へ入っていった。
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