会社では無能、家では妹に「ダサい社畜」と見下される俺。実は世界を熱狂させる神配信者につき。――俺の信者な妹が正体に気づき土下座してきたが、もう遅い(ついでに元カノとパワハラ上司も破滅させます)
第2話: 社長命令「神配信者を連れてこい」――その神、目の前の俺ですが?(※無茶振りで自爆フラグ成立)
第2話: 社長命令「神配信者を連れてこい」――その神、目の前の俺ですが?(※無茶振りで自爆フラグ成立)
翌朝。 重苦しい空気が漂う大会議室に、怒号が響き渡っていた。
「おい営業部! 今月の売上はどうなってるんだ! 先月比マイナス30%だと!? やる気があるのか貴様ら!!」
バンッ! とマホガニーのテーブルを叩きつけたのは、この会社のトップ――
「申し訳ありません社長! ですが、競合他社がネット広告に力を入れておりまして、我が社のようなアナログな営業スタイルでは限界が……」 「言い訳をするな
鬼瓦部長が縮こまり、その横で元カノの美咲や先輩の田中も青ざめている。 この会社は今、経営危機の真っ只中にある。時代遅れの商品の押し売り、劣悪な労働環境による離職率の悪化。倒産は時間の問題とも囁かれていた。
「……だが、俺も鬼じゃない。一つだけ、起死回生の策を用意してやった」
権田社長はギラついた目で周囲を見渡すと、ホワイトボードにマジックで大きくある名前を書きなぐった。
『
その文字を見た瞬間、会議室がざわめいた。
「ゼウスって……あの配信者の?」 「登録者1000万人越えの、あの?」
当然の反応だ。 正体不明、年齢不詳。ただ圧倒的なトーク力とカリスマ性、そして時折見せる過激な社会風刺で世界中を熱狂させる『ネットの神』。 若者だけでなく、今や経済界ですらその発言に注目するほどのインフルエンサーだ。
「そうだ。我が社の新商品を、この『ゼウス』に宣伝させる。奴が動画で一度でも紹介すれば、商品はバカ売れ、株価もV字回復間違いなしだ!」
社長は鼻息荒く宣言した。 ……正気か? 最後列で頭を下げていた俺は、思わず顔を上げそうになった。
「しかし社長……ゼウスは顔出しNGですし、企業とのコラボは一切しないことで有名ですが……」 「だからどうした! 金か? 女か? 奴も人間だ、弱みや欲の一つくらいあるだろう! そこを突くのが営業の仕事だろ!」
無茶苦茶だ。 社員たちが困惑の表情を浮かべる中、鬼瓦部長がふと、ニタリと嫌な笑みを浮かべて俺の方を見た。
「……社長。それなら、うってつけの人材がいますよ」 「ほう? 誰だ」 「あそこにいる佐藤です。佐藤翔」
鬼瓦が指差した先――全社員の視線が、俺に集まる。 鬼瓦は芝居がかった仕草で、わざとらしく言葉を続けた。
「彼はこのところ、営業成績で……少々、苦戦しているようですからね。ここらで一発逆転、会社への貢献を示す『大きなチャンス』を与えてやるべきではないかと」
言葉こそ綺麗だが、その目は明らかに侮蔑の色を帯びていた。 『お前みたいな無能には、このくらいの無理難題を押し付けて潰すのがお似合いだ』と言いたげな顔だ。
隣にいた美咲も、意図を察したようにクスクスと笑い、田中先輩が「さすが部長、部下思いですねぇ。佐藤くん、名誉挽回の機会をもらえてよかったね?」と揉み手を打つ。 要するに、成功すれば会社の手柄。失敗しても「佐藤が使えなかったせい」にして、トカゲの尻尾切りに使う腹だ。
社長は値踏みするように俺を睨みつけると、顎をしゃくった。
「おい、佐藤。お前、やれるな?」 「……いえ、無謀です。ゼウスはコンタクト手段すら公開していませんし、そもそも――」 「口答えをするなァッ!!」
社長の怒号が飛ぶ。
「会社がチャンスをやると言ってるんだぞ! お前には『やる』か『会社を去る』か、二つに一つしかねぇんだよ! 来週の創立記念パーティーまでに、必ずゼウスを連れてこい。……社会人としての『責任』、期待してるぞ?」
「……」
反論は許されない。 鬼瓦部長が、私の耳元で聞こえるか聞こえないかの小声で囁いた。
「……ま、精々頑張れよ。無理なら退職届の準備でもしておけ。お前みたいな陰キャじゃ、門前払いだろうがなぁ」
会議室に、忍び笑いが広がる。 誰も、俺が成功するなんて思っていない。ただのスケープゴート。一週間後の破滅が確定した哀れな男として見ている。
俺は深く頭を下げた。
「……承知、いたしました」
床を見つめる俺の顔を見て、奴らは「絶望して泣いている」と思っただろう。
――バーカ。 笑いを堪えるのに必死なんだよ。
俺は心の中で、満面の笑みを浮かべていた。 こいつら、自分から地獄への特急券を切りやがった。
ゼウスに会いたい? コラボしたい? ああ、いいとも。叶えてやるよ。 社長、鬼瓦、美咲、田中……お前ら全員が揃ったそのパーティー会場に、
そして、その配信は『商品紹介』なんかじゃない。 お前らの悪事を全世界に晒し上げる、『公開処刑』のライブ配信だ。
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