#5

――――翌日

騒がしい教室の中で、私はただ外を眺めていた・・・。


「サクどーした。そんなにたそがれて。失恋でもした?」


「・・・。」

半笑みから目を背けた・・・。


「え、マジで失恋したの?ごめんってサク」


「いや、そうじゃない。・・・そうじゃないけど――――」

・・・私は視線を戻せないでいた。


「・・・?何があったん。」

・・・視線を戻す。・・・友人は私の目をとらえていた。


「――――・・・。・・・妹との仲直りの仕方が分からん。」


沈黙が流れる。そして――――


「・・・え?やっぱサクシスコンだった?」

思わずため息が出る。・・・友人はまた半笑みを浮かべていた。


「ごめんごめん冗談だって・・・で、ナギちゃんとなにがあったん」


「・・・嫌われてる。今朝は顔すら合わせてない・・・。」


「・・・。まじか。」

友人から表情が消えていた。


「・・・俺の妹は生意気だけどそこまではなってないぞ。

・・・サクがなんかしたんじゃない?」


「・・・え」


・・・私は友人から視線を逸らせなかった。



――――放課後、行き交う生徒、そして・・・


(・・・。)

・・・残る友人の言葉。


(話し合うしかないって言ってはいたが・・・。)


重い足取りで下駄箱へと向かう。・・・その時――――


「・・・。」


・・・見慣れた後ろ姿が目に入った。


「・・・っナギ」


返事はない。・・・歩みも止まる気配はない。


「待ってくれ」

・・・ナギの腕をつかんでいた。


「・・・はなして。」

ナギの顔が映る。・・・視線は合わない。


「・・・。」


ナギから僅かに視線が向けられる。・・・眉が少し動いていた。


「・・・なに。ほっといてって言ったじゃん・・・。」


「ほっとけるわけないだろ

 なんで嫌われたのか全然わからない。

 ・・・関わらないほうがいいのかもしれない。

 ・・・でも、ナギをほっとくことだけは・・・したくないんだ。」


ナギは無言のまま私を見つめていた。


「・・・だから、ごめん。全然気づけなくて・・・。」


「・・・。

 ・・・いいよ。私こそお兄ちゃんのことちゃんと聞こうとしてなかった・・・。」

ナギの視線が落ちる。・・・私は手を放していた。


(・・・あ)

囁き声が耳に入る 。・・・視線が向けられていた。


「・・・とりあえず帰ろっか。」


「・・・そうだね」


そしてその場を後にした。半歩後ろの妹と共に・・・。

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