#4

――――三年後

高校二年。私は変化のない生活を送っていた。・・・蝉の音がやけにうるさい。


「・・・ぁ、・・・ぃばなー、おーい、たちばなー。聞いてるのかー。」

視線を向ける。どうやら私を呼んでいたらしい。


「・・・はい、すみません。」


「・・・。ちゃんと聞いとけよー。・・・というわけで、彼女は――――」


淡々と進んでいく。・・・私は視線だけを向けていた。


「――――という思いからこうなるわけだがー。・・・。

あー、たちばな?彼女が何でこの思いになったか説明できるか?」


「・・・わかりません。」


「・・・おーい。今話したばっかだろー・・・。」


「・・・すみません。」


「・・・。まぁ・・・いい。えーとじゃあ・・・」

また、淡々と流れていった・・・。


――――授業後

午前が終わり、昼休みに入る。そして――――


「サクー、飯にしよーぜー。・・・ってもう食ってんじゃん。」


いつもの友人。

「あー・・・悪い、何も考えてなかった。」


「えー、ひどいよー。俺のこときらいになった?」


「・・・何言ってんだ。」

友人は笑みを浮かべていた。


「でさーサク。聞いてくんない?」


「・・・なんだ」


「妹がさーマジ生意気なんよ。この前なんか、勝手に俺のアイス食べといて鼻で笑ってきたんだぜ、アイツ。ひどくない?」


思わず頬が緩む。彼の妹も相変わらずのようだ。


「あ、このっサク。笑ったなー。ひどいやつめ・・・。」


「あー・・・ごめんごめん、いやー・・・つい。」


「あー俺のアイス・・・。マジ許さん。

 あ、そういえばサクの妹はどんな感じなん?」


「・・・え、特に。」

視線を落とす。・・・言葉に嘘はない。


「嘘つけー。なんかあるだろ。」

苦笑いがこぼれる・・・。


「えー、おまえ・・・マジかよ。いいなー・・・。

 あ、やっぱ俺の妹と一度交換しようぜー。」


「・・・それはやめとく。」


「・・・サク、おまえ、やっぱひどいと思ってんじゃねーか。」


他愛のない会話が続く。・・・時間を忘れるほどに。


「あ、昼休み終わりじゃん。あーサク、またな。」


「・・・おう。」


また変わらない午後が流れていった・・・。



――――下校後

玄関を開けリビングへと向かう。何も変わらない光景・・・でも――――


(・・・。)


「・・・サク?どうしたの。」


「え・・・あーなんでもない。」


・・・苦笑いを返す。平常心を装いながら。


「・・・そう?それならいいんだけど・・・。」


ソファに視線を向けていた・・・。


「・・・なに、おにいちゃん。」

・・・妹と目があう。


「・・・なんでもない」


「・・・。」

・・・視線が外される。少し不満気な顔が映った・・・。


(・・・ごめん、自分でもよく分からない・・・。)


・・・私はまた自室へと向かった。伏目気味になりながら・・・。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る