#3
――――一年後
妹も卒業し中学生になった。ただ・・・
(まぁ・・・そういう年頃だよな・・・。)
眠そうに後ろを歩く妹を尻目に、歩みを進めていた・・・。
「・・・ナギは、友達と一緒に行ったりとかしないのか?」
「・・・。おにいちゃんこそ友達と行きたいならそうすれば。」
思わず返答に詰まる。数歩進んだのち――――
「・・・いや、そういうつもりじゃ・・・。」
「・・・ふーん。あっそう。」
住宅街に足音だけが流れた・・・。
――――登校後
妹と別れ教室に入る。・・・相変わらず様々な話題が飛び交っている。
それに――――
「おっ、サク。元気してたー?」
腐れ縁の友人。・・・何も変わってない。
「・・・何言ってんだ。毎日会ってるだろ・・・。」
「いーじゃん、別にー。それよりさ――――」
いつもの展開。いつもの返答。そのはずだったが・・・
「――――サクの妹めっちゃ可愛くね?」
「・・・は?」
・・・思わず友人を見つめていた。それに――――
「あと、めっちゃ仲良さそうじゃん。俺の妹と替えてくんね?」
・・・視線をそらす。・・・少しの間をおいて――――
「・・・そのままでいいと思うけど。」
「えーおまえ・・・あ、」
・・・チャイムの音。・・・友人は不満気なまま戻って行った。
(まー大したことじゃないだろう・・・。)
――――夕焼け、廊下を行き交う生徒・・・。
友人に別れを告げ下駄箱へ向かう。その時――――
「・・・あ。」
「・・・。」
妹と目が合う。・・・一人のようだ。
「友達は?」
「・・・部活。」
「・・・そうか。」
佇む妹を横目に靴に履き替える。・・・。
「・・・一緒に帰るか?」
「・・・。」
・・・カバンを持ち直し校門へと向かった。・・・半歩後ろの妹と。
「・・・そういえば、部活には入らないのか?」
「・・・お兄ちゃんだって入ってないじゃん。」
「まー・・・そうだけどさ。友達とか・・・――――」
視線を逸らす。・・・自分を棚に上げていた。
「――――いや、・・・なんでもない。」
「・・・あっそう。」
歩みを進める。・・・私はどこか懐かしさを感じながら・・・。
――――照らされた廊下、暖かな匂い、そして少しの脱力感。
カバンを下ろし、リビングに入る。・・・妹はソファへと向かった。
「あ、サク、ナギ・・・おかえり。」
「ただいま。」
「ただいまー・・・。」
・・・いつもの会話。いつもの日常が流れる。
「・・・ぇ、ねぇ、おにいちゃん?きいてるー?」
「・・・あ、ごめん。聞いてなかった。」
「・・・今日お兄ちゃんの好きなのだってさー。夕飯。」
「え、ほんとに。・・・楽しみにしとく。」
・・・私はリビングを後にした。妹と母を横目にして・・・。
――――夕飯後
自室へと入る。・・・見慣れすぎた家具が並ぶ。
(・・・。)
ベッドに腰かけ・・・そして倒れこむ。
「・・・何か・・・忘れてる気がする・・・。」
・・・私は目を瞑った。喪失感に背を向けるように・・・。
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