第16話 観測者

第16話 観測者アストルム

(Astrum -The Observer)

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 「……っ?!」


 「ぷはっ……はっは!失礼な少年だなあ〜君は。」


 「ん?……でもたしかに。そう言われてみると……なんだか言い得て妙だな……。」


 「また僕、プログラムに失敗したかな?いや待てそんなはずはない。」


 「と、すると組み込んだ時点で?いや、違う。そうじゃない。それ以前に……もうすでに僕の髪型はこんなかんじで」


 ………………


 「っと!すまない。考え込んでしまうと、僕はいつもこうでね……ははは」


 「アルテイシアが聞いたら……きっとまたあきれちゃうだろうな………。」


 と、ボサボサキノコは丸目眼鏡をくいっと上げた。そんでなんか……残念な感じだった。


 「これは大変失敬したね。それじゃあ改めて。んっ……んんっ!僕の名前はーー



「プルーデンス」


「プルーデンス・シェレトワレ」




「ノエマ、君の父だ。」


と、爆弾発言をした。



 「「ふぇえええ〜〜〜〜〜〜?!」」


 ボサボサキノコーー


 改め『 プルーデンス・シェレトワレ 』

そう名乗った男の言葉を聞いた二人は、声をそろえて驚いた。


 「いや、待てオッサン!いま、ノエマの父ちゃんって言ったけどさ……」


「なんか……そうっ!証拠でもあんのかよ?」


 アルテナは男に質問を続けた。


 「オッサン!?て……君は手厳しいね〜……」

「そうかあ、証拠ねぇ……うん。分かったよ。これが、君の言う証拠になれば良いんだけど。」


 ポチッっとプルーデンスは、よれよれのスーツの胸ポケットから掌ぐらいの薄さの端末を取り出すと、おもむろにそのボタンを押した。


。° 。°.。    。°+     .•: 〜*.


 すると、光の回廊でさっき会ったばかりの『 丸眼鏡をかけた若い男のホログラムが二人の前に現れた。


 ° 。   。°+    •:


 ホログラムは、穏やかに笑いかけるとすぐに光となって消えた。


 「「……っ!!」」


 「なんでオッサンがこれを?」


 アルテナの無礼な態度にも物怖じせず、プルーデンスは言う。


 「これは……僕なんだ。

それもずいぶんと昔のね。」


 アルテナは理解が追いつかない。


 「どういうことだよ!全っ然

今と顔がちげーじゃん!」


 「と、言われてもなあ……はは。困ったなあ。」

「う〜ん……そうだ!ノエマ」


 自分の名前を呼ばれたノエマはまた驚いて、

ちょっとだけその場で跳ねた。


 「君がここに辿り着くまで……

僕はこの場所で君を……」


「君が来るのをずっと……待っていたんだ。」


 ノエマは疑問を浮かべる。


 「まってた?わたし………を?」


          「ああ。」


 「ずっと、待っていたんだよ。」


 プルーデンスは気持ちが先行し、喋るタイミングがノエマと上手く噛み合わず、思わず食い気味にそう言ってしまった。


 ノエマには彼のその柔らかくて優しい声に、なぜか『 深い哀しみ 』が混ざって聞こえた気がした。


 プルーデンスは目尻にシワをよせ

ノエマに微笑む。


 ノエマは小さく瞬きをして一歩前へ出る。


 「待って……プルーデンス。どういうことかぜんぜんわかんないよ。」



 「それもそう……だよね。」

肩をがっくりと落とすプルーデンス。


「つまり僕がここで君を

待っていた『 理由 』はね……」



 「「理由は……?」」


 プルーデンスの次の言葉を待つ

ノエマとアルテナ。


 「君に『 真実 』を伝えるその

『 《《タイミング)》 』を待っていたからだったんだ。」


 アルテナは言葉につまった。


 『 真実 』

 

 その言葉のひびきが、なぜだか

アルテナには重たく聞こえた。


 プルーデンスは話を続ける。


 「そして今、君たちに見せた『 ホログラム 』はね。かつてアルテイシア……」



「ノエマ、君のお母さんと僕が作ったんだ。」


 「「!!?」」


 「ノエマの母ちゃんと……

プルーデンス……さんが?!」


 その突拍子もない話に、二人はどう反応すれば良いのか分からなくなった。


 アルテナの問いにプルーデンスが答える。


 「『 闇色の海 』が世界を完全に飲み込んでしまった時、アルテイシアは君をこの『 100万年後の地球アーズ 』へと導いた。」


 「君はその時、彼女から譲り受けたはずだよ。」


 「そうだね。そのペンダントさ。」



 「でもね、それはただの光るペンダント

なんかじゃないんだ。」


 「それはーー


   『 龍の心臓りゅうのしんぞう


   正確には違う……」


  「『 最初の龍プリムスドラコニス

 という物なんだ。」



 「「プリムス、ドラコニス…??」」



 彼の言葉が何を意味しているのか。二人にはさっぱり見当もつかなかった。そんな二人をよそに彼は話をこう続けた。



 「『 最初の龍プリムスドラコニス』には、結晶体のような『 ある物質 』が一つ、組み込まれていてね。」


 「それは『 原初の記憶イニティウムコード 』とも呼ばれているのとても貴重な物なんだ。」


 「「イニ……ティウム??!」」



 「ノエマ、いいかい?ーーー


 君はーー



 『 観測者アストルム』なんだ。」


 「アルテイシア……君のお母さんの」

 「次の世代のね。」


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