第8話 泣くだけ泣いたら
第8話 泣くだけ泣いたら
(Once you’ve cried all you can)
幻惑の光がゆっくりと
砂の上に落ちて溶けていく。
その光は、白紫色の環『 記憶の太陽 』によって
もたらされたものだった。
そして幻環は静かに悠々と空に浮かんでいる。
その中心に沈黙する『 漆黒の球体 』はまるで
『 まだ何かを飲み込もうと、その機会をうかがっている 』かのようだった。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
一一一一一一一一一一一一一
一一一
砂漠の朝はいつも静かだった。
けれどその日ーーー
いつもの毎日が大きく揺らいだ。ーーー
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少年アルテナは、うっすらと目を開けた。
木造の家の中は、『 ほこりのにおい 』がした。アルテナが目頭をつまんでぎゅっと押すと、泣き続けて腫れた目の奥がまだ熱かった。
「あれ?おれ……」
「そっか。あの後、そのまま寝ちまったのか……」
体に掛かっていた布が肩からずり落ちかけて、それを少女ノエマがそっと直してくれた。
「……?」
「……アルテナ?おきた?」
少女の声はいつだって夜明けの太陽みたいに眩しい。昨日もそうだ。今日だって少女の言葉は優しくて温ったかい。
アルテナはそう感じた自分がなんだか気恥ずかしくなって、寝癖がついた髪を整えるフリをした。
「……ん。もう……大丈夫。」
「ノエマ、昨日はなんかその………」
「ありがとな。」
アルテナは、照れくささを誤魔化すように目をごしごしとこすって、『 胸の奥のざわめき 』が止んでいることに気付き、ようやく胸を撫でおろした。
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すっかり身支度を済ませた二人と一匹は、互いに顔を見合わせていた。
「木箱にあったこれ、わたしのペンダントとおなじ……?」
「ほんとだな。似てなくもない……ような。つーか母ちゃんは、『 これ 』がなんだか知ってたって言うのか……?」
「にしても相変わらずひっでぇ字だよなあーこの手紙……。」
「ノエマ、良くこんなへたくそな字ィ読めたな。けど、これじゃあ……大事なことがなんにも分かんねえな……」
するとフィリムが『 なにか 』を口にくわえたまま、アルテナの方へ とことこ近づいてくる。
…ぽと。
フィリムはアルテナの足元にその『 なにか 』を落とした。
「……ん?お、フィリム?どーした?てか昨日はありがとな。あ、なんだこれ?」
「もしかして、母ちゃんが手紙で言ってた『 おれが寝る時も手放さなかったってやつ 』か?」
「なんか……『 USB 』みたいな形だな。」
「って…うおおーっ!?なんかまたきたー!!!」
突然、少年の胸から碧い光が漏れ出した。
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---ログ更新:
アルテナ・フォッティーゾ(www)
--再構築率:0.27%
-
「いや……お前の声ひさびさ聞いたわ!」
「ってそっこーイジんなっ!!!」
そんな時また、フィリムのツノが
微弱に反応しーー
新たな方向を指し示し『 二人の失われた記憶 』への道がまた、新たに開かれたのだった。
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