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概要
二十年ぶりに開けた絵の具は腐っていた。妻の記憶も、俺の人生も。
■紹介文・あらすじ
五十一歳、窓際族の会社員。妻を亡くして二十年、俺の人生は余生のように色を失った。日々の記録は、洗ってキッチンの下に積み上げたコンビニ弁当の空き容器だけ。あの日、幸せな食卓で妻が言った「いけてる?」という口癖も、今はもう聞こえない。
酷暑の夏、妻の二十回忌に魔が差し、封印していたスケッチ箱を開ける。描こうとしたのは、あの日描けなかった彼女の笑顔と、鮮やかな青空。だが、二十年ぶりに絞り出したチューブから出てきたのは、油と顔料が分離した醜い泥だった。
過去も未来も腐敗した絶望の中、俺は衝動的にパレットナイフを手首に突き立てる。しかし、そこには血も流れず、痛みもない「白い跡」が残るだけだった。
死ぬことすらできない現代の虚無と、逃げ場のない夏の熱気を描く、純文学短編。
五十一歳、窓際族の会社員。妻を亡くして二十年、俺の人生は余生のように色を失った。日々の記録は、洗ってキッチンの下に積み上げたコンビニ弁当の空き容器だけ。あの日、幸せな食卓で妻が言った「いけてる?」という口癖も、今はもう聞こえない。
酷暑の夏、妻の二十回忌に魔が差し、封印していたスケッチ箱を開ける。描こうとしたのは、あの日描けなかった彼女の笑顔と、鮮やかな青空。だが、二十年ぶりに絞り出したチューブから出てきたのは、油と顔料が分離した醜い泥だった。
過去も未来も腐敗した絶望の中、俺は衝動的にパレットナイフを手首に突き立てる。しかし、そこには血も流れず、痛みもない「白い跡」が残るだけだった。
死ぬことすらできない現代の虚無と、逃げ場のない夏の熱気を描く、純文学短編。
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