第6話 「へんたいオス、いじわるオス、人に言えない性癖オス、私たちのことHな目で見るオス、踏み外す前のギリ真人間オス」
エミルは聞いてきた、オスおにーさん何者?と。
一言で答えるなら、勇者ララミアの仲間だった男。
だがクロムにとっては絶対に秘密にしたい過去だ。
一方でエミルとラミルの双子の測量士は、お年頃で興味津々。
クロムの過去を知りたくて知りたくて仕方がない。 エミルは聞いてきた、オスおにーさん何者?と。
一言で答えるなら、勇者ララミアの仲間だった男。
だがクロムにとっては絶対に秘密にしたい過去だ。
一方でエミルとラミルの双子の測量士は、お年頃で興味津々。
クロムの過去を知りたくて知りたくて仕方がない。
「てか、なんだよオスおにーさんって呼び方」
クロムは意図的に話をそらしてみる。
「オスおじさん♡」
「いじわるオスおじさん」
「オスおにーさんで頼む」
おもわず即答した。「おじさん」だけなら大丈夫だが、「オスおじさん」なんてエロ同人に出てきそうな名前で呼ばれたら、変な誤解が生まれる気がする。イタズラ双子にイタズラをした男と思われてしまう。それは避けねばならない。
「それで、オスおにーさん何者?」
今度はラミルが聞いてきた。
「直球な質問だな」
「うん♪ ジラしプレイはしてあげない♡」とエミル。
クロムはため息をついたあと、なにげない口調でいう。
「俺は単に、森の中で長年ひとりで生きてきた男だよ」
「そうだとしてぇ、その前は何してたの?」
エミルもラミルも、ゼイムスがクロムというのは知らない。
かといってクロムは適当に嘘をつく気もない。
だから自然と、答えはこうなる。
「秘密だ」
「ふえーん」
エミルは不満げに体を小さく左右にプルプルと揺らしたあと、語尾に区切るように、
「安心して♡ わたしたち絶対に誰にも言わないか・ら」
「いやそれ、絶対に誰かに言うパターンだろ」
クロムとしては、できるだけ個人情報を与えたくない。
けれどエミルとラミルは諦めることなく、交互に質問をしてくる
「ねえ、結婚はぁ?」
「さあ」
「子供は?」
「さあ」
「長さはぁ?」
「180くらい」
「単位はミリ? 18センチ?」
興味津々に聞いてくるが
「身長180センチくらい」
「おっきい♡」
2人が何の長さを聞いてきたのかわからないが、うまくかわしてやった。
元の世界では背は高くなかったが、転生してからは上半身にも下半身にも恵まれた。
「太さは?」
「ウエストは計ったことないからわからん」
森に一人で住んでいた男が、自分のウエストなんて把握しているわけがない。
「好きなタイプは?」
「さあ」
「性癖はぁ?」
「さあ」
「得意な魔法は?」
「さあ」
「じゃ、魔法は使えるんだね♡」
「…………」
……やられた。
こいつら、わざと変な質問をして俺を油断させてたな。
長さや太さを聞いてきたのも、俺に「マセガキだな」と思わせるため。
エミルとラミルは単なるマセガキじゃなく、妙に知恵がまわる。
はぁ……できるだけ魔法が使えることも秘密にしておきたかったんだが。
「……けど、魔法が使えるのはわかってた」
「うんうん、オスくさくって魔力くさいもん」
どんな匂いだよそれ。
「それでぇ~、どんな魔法が得意なの?」
……それが問題だった。
クロムの魔法は、間違いなく強い。だが、万能ではない。
へたにクロムが魔法を使うのを見せてしまうと、隊のなかで期待や依存が生まれてしまう。
いざとなればクロムが魔法で解決してくれる、という空気を作ってはいけない。
戦争が一人で勝てないのと同様に、魔王討伐の冒険も一人の力で成しえない。
『ゼイムスの手記』の作者であるクロムは過去の経験から、勇者たちも支援隊も成長していかないと、魔王軍にたどり着けないと考えている。
だからクロムの魔法は、まだまだ秘密にしておく必要があった。
また手記に登場する魔法とクロムの魔法が、似ていると気がつく者もいるだろう。
そのためクロムは、こう答えるしかない。
「秘密だ」
と。
エミルとラミルは不満げに
「けち」
「けち」
と不満そうながらも可愛い声を揃えた。
「ケチでけっこう」
「ジラしプレイ好きのへんたいオスぅ」
「へんたいオス、いじわるオス、人に言えない性癖オス、私たちのことHな目で見るオス、踏み外す前のギリ真人間オス」
「真顔でいうのやめてくれ」
ラミルは表情も抑揚も薄いため冗談を言っているというより、事実を告げているかのように聞こえる。
散々な言われようのクロムだが、Hな目で見るように仕向けているのは2人である。
こんな世話のかかる測量士の双子も、クロムは心から成長していってほしいと願っている。
「ねえねえ、なんで教えてくれないの~?」
「さあな」
「もしかして人にいえない魔法?」
まぁ、たしかに言いづらいが……
「わかった~。服が透ける魔法」
んなわけねーだろ!とクロムは思うが、あえてそういった情報も与えない。
「それならわたしたちと一緒」
そう言いながらエミルとラミルはクロムを、特に下半身をジーっと見てきた。
「長さは~~」
「太さは――」
「なあああぁ!!?」
測量士の魔法使いってそんなこともできるのか!?
クロムは思わずスコップから両手を離し、大事なところを両手で隠す。
「ひゃふふ、ひっかかったー♪」
「そんな魔法、使えない」
……やられた。まともやられた。
なんだかんだ、双子の言動に翻弄されてしまっている。
「それに~服が透ける魔法が使えるとしても、見たりしないよ~」
「何を」とは言わないが、どこのことを言っているかはわかった。
ま、そうだよな。こんなガキが30歳くらいの大人のアレをみるって、どういうことだよ。
「汚い」
いや、そうなんだけど!
直球で言われると、それはそれで傷つくっていうか……
「ひゃふふ、やっぱりオスおにーさんを弄ぶの楽しい♡」
「そーかそーか、そりゃよかったよ。てか、お前ら……」
「なに?」
「他の隊員にもそんな感じなのか?」
「まさかぁ。オスおにーさんにだ・け♡」
「なんで俺だけ」
「気になる男の人だから」
気になる男の人という言葉だけ聞くと思春期の甘酸っぱい恋心のようであるが、それは未来の話。
「オスおにーさんの秘密は、絶対にわたしたちが暴いちゃう♡」
「ったく……」
クロムは再びスコップを手に持ち、穴を掘り始める。
これ以上、双子に振り回されるのは避けたい。
双子はクロムから再びボロが出るのを狙っている。
一方で双子は気がつけていないことがあった。
自分たちがクロムの正体を暴こうとしているうちに、知らず知らず会話を楽しんでいっていたことを。
時間がすぎるのを忘れるくらい男の人と話していたのが、実は初めてだったことを。
そんなとき、少し離れたところで穴を掘っていたジークがクロムにむかって大声で話しかけてきた。
――支援隊の日常は今のところ平和である。
だが魔王討伐に向かう旅、というのを忘れてはいけない。
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