第5話 「オスおにーさん♡」
「オスくさくて、くらくらしちゃいそぅ♡」
少女はイタズラっぽくて甘い声をだし、イジワルっぽい瞳でクロムを見ている。
胸元が見える黒いゴシックドレス風の服は、魔法装備であろう。
少女は今しゃがんでいるので、薄く青い長い髪のツインテールが地面スレスレに近づいている。
また、しゃがんでいると小さくなっていると自然と小さくみえるのが一般的だが、それはあくまで高さの話。
彼女の存在感は凄まじい。
その理由は胸。溢れんばかりの胸ではない。
しゃがんでいるため胸が膝に押し潰され、やわらかな肉が上へとはみ出してしまっている。
(支援隊の女の子は、なんで発育のいい子ばかりなんだ……)
だが目の前の小悪魔少女は、ヒエンカとは決定的に違うところがある。
ヒエンカは無防備で見せてしまっていたが、小悪魔は意図的に肉体を主張するポーズをしている。
「わたしを見るんじゃなくてぇ、オスおにーさんは穴を掘らないと~」
続けて、胸の谷間に人差し指と中指をいれた。
「あれけもしかして、こっちに穴を掘りたいの♡」
ド下ネタだ。
隣にいた少年ジークはうつむき頬を赤らめている。
「エミル、女の子がそんなこと言うもんじゃない」
クロムは大人の威厳をもっていう。
「え~ん、もっと興味をもってくれてもいいのにぃ」
口では「え~ん」なんて言っているが、顔は誰かを誘惑するかのような悪い笑顔を浮かべている。
クロムが元いた世界でプレイしていたゲームなら、この手の女の子は貧乳が多かった。
なのにエミルは14歳にして、ムチムチ。どうしたらそれほど育つのか。もはや人体の神秘ともいえた。
しかし、例え胸が大きかろうとマセていようと、
「ガキ」
直球で言ってやった。
「そうだよ、ガキだよ♪ だから、お・し・え・て♡」
甘い声色でいうエミルがいう。
「だから、そういうこと言うんじゃありません」
おもわず先生みたいな口調になってしまう。
「てか、お前らも手伝ったらどうだ」
クロムは「お前ら」と言った。複数形である。
「……拒否権を発動。私たち、測量士だから」
眼の前でしゃがみながらクロムを見上げているのは、1人ではない。双子の測量士だ。
「モンスターのサイズからすると~、穴の深さは、1メートル30センチはほしいよ」
やたら高さ深さといった長さにこだわり、からかいながらニヤニヤ喋るのが姉のエミル。
「太さ……直径は2メートル10センチ」
やたらと太さにこだわり、端的に必要なことだけ話すのが妹のラミルだ。
「はいはい、教えてくれてありがとよ」
双子は当然そっくりであるが、目元は性格を表すように違っていた。
姉エミルは、いつも楽しそうに笑っているような目で、
妹ラミルは、ジト目というのだろうか、目元と目尻が高い位置にある。
この双子の測量士は、支援隊のなかでも特に目立つ存在だ。
胸が大きいから、という理由だけではない。
腰から小悪魔のような羽が生えており、本当に小悪魔のような風貌なのだ。
とはいえ魔族というわけではない。
本人から聞いたわけではないが、おそらくコウモリ亜人の血が入っているのだろう。
エミルは小悪魔の羽をぴょこぴょこと揺らしながら、いたずらっぽい声をだす。
「オスおにーさんのも測ってあげよっかぁ♡」
なにをだよ!とクロムが内心でツッコミを入れたのと同時に、
「俺、あっちで穴を掘ってきますね。モンスターもう1匹分の」
ジークはそう言い、「あの、俺、口は硬いんで大丈夫っす」と離れていってしまった。
あらぬ誤解をうみそうなまま、うぶな少年の背中を見送る。
そしてクロムは、やれやれとした気持ちで双子たちに視線を戻す。
「みゅふふ、これで私たちだけだね」
「私たち3人の時間」
嬉しそうに笑うエミルと、ゆっくり頷くラミルを見て、クロムは1つの可能性が浮かんだ。
「……それが狙いだったのか?」
しかしエミルもラミルも、クロムの質問には答えない。
かわりにエミルが「これが本題」といわんばかりに、ねっとりした口調でいう。
「オスおにーさん、何者?」
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