第3話 依存
もし自分の夢を応援してくれて、しかもそれがまさに自分の理想の人で、瞳に映る何もかも完璧に見えたらどうなると思う? 神格化し始める?いいや、それはまだ少し早い、けどそれの1歩手前だね
依存するんだ。
彼女は僕のくだらない海外移住の夢を、真剣に聞いて「応援する」って言ってくれた唯一の人だった。その優しさに依存しないわけが無い。
しかし凄いのが、依存した僕を彼女は何一つ変わらない態度で受け止めてくれた。
普通なら重たいとか、面倒くさいって思うと思うし少なからず彼女もそう思ったかもしれない、でも彼女は顔色1つ変えずむしろ嬉しそうにしてくれてた。 確かに彼女の国柄的には日本より愛情表現がもっと激しいしそれが普通の国だけど、それにしても僕は結構キモかったと思う。
まさに完璧な依存環境が整ったって訳だ。 全てを受け止め夢を応援してくれて、内面も外見も美しい。そんな人と出会って依存しない方が無理があるかもしれないね。
でも忘れちゃ行けない、彼女は国に帰るって事だ。 今きっと読者の中の半分はいや、7割は”着いて行けばいいじゃん”って思っただろうね。 実際着いていけば良かったと思う事はあるけど、それは結果論に過ぎない。
とにかくなぜ当時の僕は着いて行かなかったのか? 理由は幾つかあるが1番は僕が弱かったから。 言い訳にしか聞こえないけど、日本とは真反対の土地に彼女がいるとは言え一人で、彼女以外の知り合いも居ないのに行くのは、高校生の僕には怖かった。 もし彼女と別れたら?僕はどうなる?ろくに彼女の母国語も話せないのに? そんな思考がずっと頭を巡ってた、それに親も認めてくれないのはわかってた。 でも別れたくはなかった。 怖くて何も出来ないくせに必死に幸せにしがみつこうとしてる、哀れで滑稽としか言いようがない。 そしてそんな弱い僕は彼女に約束をした。 今度は僕が君の国へ留学に行くって。 結局は僕は今怖くて行けない、けど君とは別れたくない、それなら留学に行くって言えば彼女は僕の物のままだって、深いところでは思ってたんだと思う。最低な男だよ本当に。
ついに彼女が国に帰る日、僕は泣かなかった、彼女は少し泣いてたかな?だって別れのキスをした時彼女の顔は少し冷たかった。 僕が泣かなかったのは僕が泣くことで彼女が、未練を残さないようにする為だ。矛盾の塊だよね、でも人の感情ってのはぐちゃぐちゃで一本線なんかじゃない、沢山矛盾してそれを正当化するのに必死。この時の僕もそうだった、すごいぐちゃぐちゃで色んな感情が渦巻いてた。
彼女が帰ってから僕はものすごく空っぽになった気がした、だってもう夜の散歩を一緒にする人も、目と目を見て「あなたを信じてる」って言ってくれる人もいない。 でも彼女とは連絡を取り続けた、それが当時の僕にとっての唯一の希望だったよ。
ここから先は一瞬だけよくある展開になる、そう連絡をしなくなるんだ。 理由は?分からない、でも毎日毎日少しづつ少しづつ連絡が少なくなる、1日50回会話のラリーが40回、20回、5回、そして0
何を考えてるのか馬鹿な僕はそれでも彼女との事を諦めてなかった、確かに彼女は愛してるって言ってくれたからね。 だからまだ僕も愛されてるんだって。
そんなある日僕は人生で最大のショックを受けることになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます