相棒が現代の乗り物に変形できる【万乗ビークル】でした!~剣と魔法の異世界で、今日も仲間達と共にスローライフをしながらのんびり旅~
タジリユウ
第1話 異世界転生と初めての変形
「……ここはどこだ?」
見渡す限り一面の青々とした草原。遠くの方には高い山がいくつにも重なって見える。
気が付くとなぜか俺はそんな場所でひとりポツンと立っていた。
「なんで俺はこんな場所にいるんだ?」
記憶を思い起こしているが、いつものように仕事を終えたあと普通に晩ご飯を食べてサブスクで動画を見てからベッドに入ったところまでしか記憶にない。普通に考えれば夢の中なのだが、この頬を撫でる心地よい風や空から降り注ぐ暑い日差しは現実のようにしか感じられない。
『それはマスターが死んでこの世界へ転生したからです』
「うおっ!? な、なんだおまえ!?」
完全にひとり言をつぶやいていたつもりだったのだが、突然背後から返答があった。振り向いてみると、そこには30センチメートル四方のサイコロ型の何かがふわふわと浮いている。
『中村
「いやいやいや! 死んだって何言ってんだ、このサイコロ! 俺は今まで健康診断で引っかからなかったことが数少ない自慢なんだぞ!」
『そう言われましても、私の中にはそのデータしかございません。確かにマスターは比較的健康的に見えるので、運が悪かったのかもしれませんね』
「運が悪かったですませられないんだがな……。というか今転生と言ったか? それにマスターとは俺のことか?」
『はい、こちらはマスターの世界とは異なる世界となります。そして私はマスターの能力である【
……いきなり情報量が多すぎる。
転生って最近アニメとか漫画とかでやっているあれか? 誰かを助けようとしてトラックにひかれて死んでしまったところ、神様からすごい能力をもらって別の世界へ連れていってもらえるやつ。別に俺はそんな徳を積んだ覚えはないのだがな……。
とりあえずここが夢の世界でなければ、この大きなサイコロくんが俺の能力というわけか。というか万乗ビークルってなんぞ?
「その万乗ビークルってどんな能力なんだ? 他にも俺が使える能力はあるのか?」
『【万乗ビークル】は私がマスターの世界の
「乗り物? もしかして車とか電車とかに変形できるってことか?」
「肯定します」
おお、ちょっと格好いいな。そういえば昔英語で習ったがビークルとは乗り物という意味だったか。
……というか、いつの間にか寝巻のジャージから服とズボンが変わっていた。薄茶色いシャツと黒いズボンで、靴はなんらかの動物の皮でできていて紐で縛られている。着心地も普通の服とは異なるし、どう見ても現代日本の物ではない。もしもここが本当に別の世界で、この服レベルの文明ならば、車や電車なんかは結構なオーバーテクノロジーなのではないだろうか。
そして言葉が通じるのはとても助かる。実際のところ現地の人と意思疎通ができなければその時点で詰みになりそうだ。
「じゃあサイコロくん、早速なにかに変形してみてくれ」
『承知しました。その前にマスター。ぜひ私の呼び名を決めてください』
「呼び名か。そうだな……」
確かに俺の能力というのなら、サイコロ呼ばわりはさすがにあんまりか。
ふむ、万乗ビークルだからビークル……というのは安直すぎるな。乗り物といえば――
「そうだ、ノアはどうだ?」
『すばらしい名前ですね! 良い名前をありがとうございます、マスター』
確か旧約聖書で箱舟を作った人だったな。その名の通り、ぜひとも俺を救ってほしいものだ。
「それじゃあ、ノア。車に変形してみてくれ。いや待てよ、せっかくなら空を飛んでみたいから飛行機で頼むよ」
『申し訳ありませんが自由に変形できるわけではなく、初めは変形できるものが限られております。まずはそちらに変形します』
「ああ、そうなんだ。じゃあそれで頼む」
どうやらどんな乗り物にでも変形できるわけではないらしい。さすがにそれは都合が良すぎたか。
『承知しました。変形!』
「おおっ!」
立方体だったはずのノアが形を変えて次第に大きくなっていく。前と後ろに丸いタイヤの形ができてきた。
もしかするとこれはバイクか? この草原をバイクで突っ走ったらとても気持ちが良さそうだ。
『完成しました。こちらが【自転車】です』
「………………」
まさかの人力だった。確かに乗り物だけどさあ……。
万乗ビークルと聞いた時はもっと凄い乗り物にも慣れると思っていたのだが、完全に名前負けしているぞ……。
「ええ~と、バイクはともかく、せめて今はやりの電動自転車くらいにはなれないの?」
『申し訳ございません。現在の状態ですと、この乗り物にしかなれないようです』
「そうなんだ……」
う~む、よくあるママチャリでなく、マウンテンバイクっぽい自転車であるだけマシといえばマシなのだろうか。
能力に期待していた分がっかり感がすごい。
「現在の状態ということはなにか条件を満たせば新しい乗り物になれるのか?」
『はい。私に乗りながら新しい道のりを走るとポイントが貯まり、それを使用して新たな変形先を解放できるようになります』
「……なるほど。新しい道のりというのは一度通った道だとカウントされないということか?」
『肯定します。新しい道を旅しつつ、1キロメートルを移動するごとに1ポイントを得られます』
おおっ、どうやらこの能力は次々と進化していくようだ。しかし、新しい道を走らないと駄目ということは、どこかの街を拠点にして滞在するというのは現実的ではない。新しい街を転々としつつ、旅をしてポイントを稼いでいくという能力のようだ。ある程度ポイントを得たらどこかに引きこもって暮らすというのもありか。
『こちらが現在のポイントで解放できる変形先となります』
「おおっ、これは――!」
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