第3話 何度生まれ変わっても

 この日は3時間ほど、Rる。のマンションにお邪魔をして2人は帰って行く。



 玄関先で手を振るRる。


「また、いつでも遊びに来てね」


 優しい表情に名残惜しい気持ちになるKとR。


 Rは満面の笑みで手を振り返した。


「うん、めっちゃ楽しかったし、必ずまた来るね」


 少し照れくさそうにお辞儀をするK。


「本当に楽しかったです、ご馳走さまでした。お邪魔しました」



 今日のことをKとRは話しながらエレベーターで降りていく。


 少し、いたずらっぽくKに話すR。


「ねぇ、Rる。さんに見蕩れてたから鼻の下伸びてるわよ」


 Kは鼻の下を触りながら。


「え、え、ヤバい、チンパンジーになってしまう」


「「あはははは」」


 2人の笑い声がエレベーターの中で響き渡った。

 


 ☞ ☜


 Rる。の住むマンションを後にする2人。


 

 強い風が吹いてRが少しよろけた。


「キャー」


 咄嗟にRの肩を抱くK。


「大丈夫?」


「うん、ありがとう」


 冷たい風だったが心は春のような2人だった。


 帰りにコロッケを2つ買って、自分たちの住むマンションに戻ってきた。


「楽しかったにゃー」


 Rが少し甘えた声でKに寄りかかった。


 微笑むK。


「うん、また行きたいね」




 俺は運命の人でもあるRさんと出会い、幸せを噛み締めながら、また優しいRる。さんとの出会いにも、穏やかな気持ちになれる、春の陽だまりような居心地の良さを感じていた。



 その夜、Kは今も続けている、Rと出会ったSNSで「K」というアカウント名以外に、もう1つ、Rには内緒で「我が麗しのRさん」というアカウント名の垢を作っていた。


 そこではRへの想いを詩にして投稿していた。


 そして、また今夜も──


 #詩


「何度生まれ変わっても」


 何度生まれ変わっても

 また初めから恋が出来る


 何度生まれ変わっても

 君に出逢う旅


 寒色の街なら直ぐに見つけられる

 暖色の君の色


 繰り返しの宇宙で

 ただ繰り返すだけ


 僕が寒色なら君は気づかないだろう


 心は育むもの

 枯れないように折れないように


 君に似合う僕になるために


 また同じ星の同じ時に生まれ変わるため


 神様にお願いしないといけないな



 ──宛先のない恋文はきっと世界一

 尊い。


 Kがパソコンで投稿し終わった後にRが覗き込んできた。


「え?何、そのアカウント?」


 Kは慌てている。


「あ、これは、仕事用で……」


「あー、浮気のために作ってるんだ!」


 少し不審な顔でRはKの顔を覗き込む。


 慌てながらも何とか誤魔化すKにRは思っていた。


 えへへ、ぜーんぶ知ってるし、全部の詩をスマホでスクショして、ちゃんと取ってるの。


 Kちが私の春だよ。一つひとつの詩が、桜の1枚いちまいの花弁ようで、とても綺麗で大切なの。


 本当にありがとう。大好きなKち。

 ずっと春にいさせてくれて。


 Kに、また寄りかかり微笑むRだった。

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我が麗しのRさん໒꒱番外編໒꒱何度生まれ変わっても 七瀬 錨 @ika358369

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