第14話 妖怪譚 ―「ぱんからぽん」

妖怪譚 ―「ぱんからぽん」

和光は最後の旅路に立った。月明かりの下、半濁音の「ん」で終わる妖怪たちが現れる。

• ぱん ― 破の妖怪。ものを打ち砕き、世界の殻を割る。

• ぴん ― 緊の妖怪。張り詰めた糸のように、人の心を極限まで緊張させる。

• ぷん ― 噴の妖怪。怒りや炎を吹き上げ、感情を爆発させる。

• ぺん ― 筆の妖怪。書かれたものを生かし、言葉を現実に変える。

• ぽん ― 音の妖怪。最後の響きを放ち、すべてを余韻に溶かす。

和光は一体ずつ対峙しながら悟る。

「ぱん」は破壊、「ぴん」は緊張、「ぷん」は爆発、「ぺん」は言葉、「ぽん」は余韻――それらは人間の生の最終段階を象徴していた。

最後に「ぽん」の妖怪が囁く。

「すべては音に帰る」

和光は答える。

「音は消えず、次の世界を呼ぶ。『ん』は境界であり、永遠の循環を示す音だ」

その瞬間、五体の妖怪は「ん」という一つの響きに収束し、月光の中へと消えていった。

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