謎②鳥はどこから来た
さて、二つ目の謎にまいりましょう。
ただこれに関しては、人によって気分が悪くなる可能性があります。血が苦手な方にはおすすめしません。
ご留意の上、自己判断で読むかどうかを決めていただきますようお願いいたします。
では大丈夫な方、続きといきましょう。
実は私、昔は公務員として働いていました。
私が働いていた組織では、希望すれば宿舎に入居できます。平たく言えば社員寮です。
しかし複数ある宿舎の中で、どの宿舎に入るかは希望できません。
つまり、「宿舎希望」とした場合、運がよければめちゃ綺麗な宿舎に入れる一方で、逆にめちゃ古い宿舎に入れられる可能性もあるというわけです。
当時新人だった私。
築45年くらいの宿舎にぽいっと入れられたのですが、お風呂は床がコンクリートでバランス釜、トイレには換気扇も便器の蓋もないようなところでした。
それでも住めば都。特に不便も感じず、普通に暮らしていました。
ある風の強い日。
ガタガタと物音がすごい。なにせ築45年。隙間風はお手のものだろうと、気にすることもありません。
夜勤を終えて帰宅した私は、昼食も終えて、人をダメにするソファでまったりダメになっていました。
(あ、トイレ行きたい)
自然の摂理です。
私は特に何を思うこともなくトイレの扉を開けて――
――バタンッ!
入る前に勢いよく閉めました。
鳥です。
はい、ここで登場、鳥です!!!
鳥が私めがけて飛んできたのです!
家の中ですよ!? トイレの中から飛んできたのです!
しかも扉を開けた瞬間に鼻についた鉄の匂い。
もうパニック。本当にパニック。
さっきからガタガタとうるさかったのは、隙間風ではなく鳥がトイレの中で暴れていた音だったのです! なんで気づかなかった!
しかもその鳥、雀なんてかわいい大きさじゃない。
鳩。鳩ではないけれど鳩と同じくらいの大きさの鳥だっのです。
思わず反射的に扉を閉めてしまった私は、さすがにもう一度開ける勇気はなく、管理人さんのところへダッシュしました。
ピンポンの連打ですよ。いい迷惑です。
出てきた管理人のおじさんに、
「と、鳥がっ。鳥が出て……っ。助けてください……!」
必死に言い募る私に対して、管理人さんはマジで「こいつ何言ってんだ?」の顔でした。そりゃそうだ。鳥はそこら中におりますしね。
とにかく来てもらったほうが早いと判断した私、容赦なくおじさんを連れ出しました。
でもこの方、結論から言うとイケオジだったのです。
あるいはメシア。男神。一生忘れない。顔は忘れたけど。
私に無理やり連れてこられた管理人さん、トイレでいまだに暴れていた鳥を臆することなく勇敢にもとらえて逃してくれたのです!
惚れる! ありがとう! 本当にありがとう!
トイレの中が血だらけだったので、その鳥は怪我をしていたと思うのですが、とにかく元気。手当てをさせてもらえる隙もなく飛び立ちました。
飛べたならまあ大丈夫か……? と思いつつ、でも私のトイレは全然大丈夫じゃない。
ここは猟奇殺人の現場か?と思うほど血が飛び散ってて普通にホラー。だって壁中真っ赤でしたからね。
とりあえず管理人さんにお礼を伝えて、私は大人しく薬局に行って消毒を買い込み掃除をしましたが……問題はそこじゃありません。
鳥、おまえ、どこから入った?
トイレの扉は閉まっていた(だから私は『開けた』し、鳥も出てこられなかった)。
このトイレに換気扇はない。
代わりに窓はあるものの、鍵はきちんと閉まっていた。
トイレのタンクも閉まっていた。
可能性があるとしたら(蓋ナシ)便器の中からだけれど……え、鳩くらいの大きさの鳥ってここ通れるの? そんなわけないよね?
謎。
マジで謎。
密室殺人みたいなことになってた現場。
ヒントがあるとしたら、「トイレのタンクの中で鳥が死んでたのを見つけた」という私の同期の証言(これは私の事件とは別件です)。
さあ、あなたはこの謎が解けますか?
できれば現場にご案内したかったところですが、公務員宿舎の縮小によってもう取り壊されてしまいました。
まあ、そうでなくとも、その後も普通にそのトイレを使って暮らしていたので、現場保存はできていなかったのですがね……(写真を撮っておけばよかったと後悔しています)。
というわけで、大喜利でもなんでも大歓迎です。とにかくそれらしい答えが出ることを祈ります。
切実に。
誰か。
答えをください!
人生で起きた謎 蓮水 涼 @s-a-k-u
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