勇者パーティが壊滅したので王国軍が魔王討伐します ~無能集団と思われているので戦術とフィジカルで全部まくってやる~
@akasatanachan
第1話 勇者パーティ
神速のクレス・クーは『勇者』パーティの剣士だった。
その時代、もっとも強いただひとつの冒険者パーティへ贈られる『勇者』という称号。
国王に認可された100組を超える冒険者パーティが、日々大陸最北端の『魔王城』を目指す中、クレスたち『勇者』はその先頭を走っていた。
『勇者』の称号に恥じない実力があった。
魔王を倒せるビジョンがあった。
使命感が、正義が、覚悟があった。
しかし、クレスの心は──。
「なんだよ......なんだよこれ」
目の前で起きているウソのような光景に、完全にへし折られてしまった。
「クレスくん......クレッ!?」
彼の眼前では、たった今『勇者』パーティの僧侶が、獣人型のモンスターがもつ長刀に心臓を貫かれたところだった。
何年もの長い間苦楽を共にした彼女の、ボロボロの姿。
魔法使いからの最後の
遠くの方で戦士が引き起こしていたであろう地鳴りも、もう聞こえない。
直感が告げる。
『勇者』パーティの中で生き残っているのは自分だけなのだと。
「おいィ? てめェの強さが足りねェせいでこの女が死んだぞォ!?」
事切れた僧侶をわきに投げ捨て、目の前の獣人は豪快に笑い声をあげた。
辺りでは、積み重なったモンスターの死骸を乗り越えて、新たな上級モンスターたちがクレス・クーを取り囲みつつある。
三日、三日が経った。
ダンジョン帰りの休息中に突如として起きた転送魔法による奇襲分断。
遠方に飛ばされた彼らを待ち受けていたのは、数多のモンスターの隊列と強大な魔族。
戦闘をはじめてからクレスは、三日休まずに戦い続けたのである。
その結果がこれか?
全滅、目の前で見世物のように殺される仲間、あざけり笑う魔族。
「お......え......っ」
嗚咽も絶叫も、少しの悪態さえも出ない。
重度の脱水症状で喉はつぶれている。
頭にはもやがかかったようで、意識はもうろうとしている。
もはや魔法も詠唱できない。
「んだよォ、怒り狂って突っ込んでくるかと思ったのになァ」
耳元で声がした。
さきほどまで目の前にいた獣人が、一瞬のうちに背後に回り込んだのだ。
瞬間、クレスの脇腹に長刀による薙ぎ払いが叩き込まれた。
すんでのところで剣を使って受けるが、衝撃を吸収しきれずに吹き飛ばされる。
からだをフルオートで守ってくれるマジック・アーマーはもはや魔力切れで機能していない。
受けられなければ命を奪っていたであろう一撃に、背筋を悪寒が走った。
魔王の幹部とされる魔族とはこれまでも何度も戦ってきた。
眼前の獣人よりはるかに強いものとも刃を交えてきた。
しかし、今回は違う。
敵は一体となってクレスたちを襲い、普段なら群れないはずの強力なモンスター同士が連携して彼ら『勇者』を追い詰め、殺した。
死を覚悟した戦いの後には、必ずほかのパーティメンバーたちの笑顔があった。
しかし彼らはもうこの世にいない。
今までの過酷で素晴らしかった日常の風景が走馬灯のように一瞬で脳裏を駆け巡り──。
「あぁぁ......っ、うわあああ!!!」
すぐに、死への恐怖がすべての感情を塗りつぶした。
「来るなっ! 来るなぁっ!?」
無様な絶叫を響かせ、正義も理念もかなぐりすてて、クレスは背後の銛の中へ逃げ出した。
神の恩寵を受けたその脚力、瞬発力、速度。
すべての恵まれた力は逃げるために、命拾いをするために行使された。
「逃すなァ! 追え、追えェッ!」
魔人の声が荒れ果てた森に木霊する。
すぐに周囲のモンスターたちが呼応し、死に損なった勇者を追っていく。
森の空気が震えていた。
世界のあり方が、変わろうとしていた。
この日、『勇者』パーティが壊滅した。
勇者パーティが壊滅したので王国軍が魔王討伐します ~無能集団と思われているので戦術とフィジカルで全部まくってやる~ @akasatanachan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇者パーティが壊滅したので王国軍が魔王討伐します ~無能集団と思われているので戦術とフィジカルで全部まくってやる~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます