第4話 ほんとに見つけちゃったわ

 ルナとアレクは、峠道を上って行く。

 他に通行人の姿はない。

 次第に道幅が狭くなる。

 道の周囲は、草や灌木かんぼくに覆われている。


「何か匂うような気がするなあ」


 立ち止まったルナが、林の奥をのぞき込む。


「鼻がいいんだね。

 僕には、何も匂わないけど」


「匂いというよりは勘かな。

 とにかく、こっちに入っていってみよう」


 ルナは、道のない林に分け入る。

 足下あしもとが悪く、歩きづらそうだ。

 アレクも、仕方なくルナに従う。


 しばらく進むと、林がひらけてきた。

 草地の中をさらに行く。

 すると、前方に小さな木が生えているのが見えた。

 高さは、二十センチほど。

 生え始めてからそんなに月日はたっていないようだ。


「ねえ、アレク、あの木、どことなく尊い感じがしない?」


「確かに周りの木と雰囲気が違う」


 葉に独特の光沢があり、太陽の光を反射してキラキラと輝いている。

 気分のよくなるような香りもする。


「信じられないけど、きっとこれがサンダーニカだよ。

 鳥が種を運んできたのかなあ」


 アレクは、木に近寄ってじっくりと眺める。


「ほんとに見つけちゃったわ。

 やっぱりアレクって凄いよ」


 ルナは、目を潤ませてアレクを見つめる。


「いや、別に僕が見つけたわけじゃ……」


「アレクのおかげで見つかったんだから、アレクが見つけたようなものよ。

 アレクの幸運付与の能力って、普通じゃないレベルだよ」


 アレクは、自分の幸運付与がどれだけ役に立ったのか実感できていない。

 サンダーニカの発見は、あくまでルナの手柄だからだ。

 ルナの賞賛に対して、はにかむように笑うだけだった。




「まだ小さい木だから、葉っぱを五枚ぐらい頂戴するだけにするわ。

 それで十分足りるはずだし」


 ルナは、五枚の葉を腰につけたウエストポーチ状のかばんに収める。

 見た目よりは五倍ぐらい中が広い魔法の鞄だ。


「伝えられている話だと、エンブダイ大陸でのサンダーニカは、途轍もなく巨大な大木になるそうなんだ。

 これが大木になるまでには、どれだけの年月がかかるんだろう」


 アレクは、感慨深げだ。


「ところで、アレクって、サンダーニカのことに詳しいけど、どうして?

 探してたあたしだって、よく知らないで探してたのに」


「本とかで読んで知っていただけだけど」


「結構な読書家なんだね。

 知識のある人って尊敬しちゃうなあ」


「そうかな?

 図書室が好きで、よく適当にいろいろ読んでただけだけど。

 ところで、ルナは、どうしてサンダーニカを探していたの?」


「それが、最高の傷薬ってのを求めている人からの依頼なの。

 サンダーニカの葉が原料だと言われて探していたの」


「その薬って、続断薬ぞくだんやくのことだね。

 手足が切断されても接続することができるから、そんな名前なんだとか。

 さすがに話が盛られているような気がするけど」


「へえ、そんな凄いんだ」


 ルナは、大いに感心している。

 だが、アレクは、不審に思う。

 なぜ実在も不確かな薬を探すのを一介の個人冒険者に依頼したのだろう。

 国家的な事業として船団を組織してエンブダイ大陸を目指すはずだ。


「さて、それじゃ依頼者のところへ戻ろう。

 アレクも一緒に来る?」


「じゃあ、行こうかな」


 二人がその場を去ろうとしたその時だった。

 林の木々がガサガサと揺れる音がした。

 何か大きな生物が近づいている気配がする。


「強そうなののお出ましだわ」

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2026年1月2日 07:00
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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。 秋ヶ瀬胡桃 @veronica001

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