第3話 聞いたことのない珍しい職業ね

「なんとかなるって、どういうこと?

 サンダーニカは、行き方もわからないような別の大陸にあるって言ってたけど……」


 ルナが驚く。


「でも、やっぱり難しいかな」


 アレクは、自信なさそうに頭をかく。


「もう、どっちなのよ」


「ここじゃ何だから、歩きながら話すよ」


 二人は、ギルドの門前から町中へと歩き出す。




「僕が天から授かった職業は、幸運付与師なんだ」


 この世界では、十歳の時に天の神から職業が与えられる。

 それによって人生が決まるのだ。

 アレクは、家庭の事情で十二歳の時から冒険者を始めていた。

 冒険者になってすぐに、まだメンバーの少なかった憤怒の掌に加入した。

 憤怒の掌は、当初は中級のパーティーだった。

 アレクの幸運付与のおかげで、瞬く間に特級冒険者パーティーとなった。


「幸運付与師?

 聞いたことのない珍しい職業ね。

 人を幸運にするってこと?」


「そうなんだ。

 特に戦闘において、運良く勝てるようにするんだ。

 戦闘でなくても使える能力だと思うんだけど……」


「つまり、偶然サンダーニカを手に入れられるようにしてくれるってこと?」


「まあ、そういうことなんだけど……」


「うわあ、すっごーい!」


 ルナは大喜びだ。

 満面の笑みで跳びはねる。


「アレクと会えたこと自体が、信じられないぐらいの幸運だわ」


 対照的に、アレクの表情は暗い。


「どうかしたの、アレク?」


「肝腎なスキルが大したことないんだよ。

 パーティーをやめさせられたのも、そのせいなんだ」


「そう……。

 でも、あたしは、アレクの才能を信じるよ。

 だって、感じるんだもん」


 特に根拠のある発言ではない。

 冒険者としての勘だ。


「とにかく、その幸運付与ってのをあたしにやってみてよ」


 アレクは、ルナに向かって手をかざす。


「それだけ?

 詠唱とかもしないの?」


 ルナは、きょとんとしている。

 術をかけられた感覚がないのだ。


「なんかよくわからないけど、信じるわ。

 さあ、サンダーニカを探しに行きましょう」


 ルナが走り出す。

 アレクは、ルナの跡を追う。


「探しにって、当てはあるのかなあ」


 ルナをその気にさせてしまったことに申し訳なく思う。

 自分の能力は、役に立たないからとクビになった程度だ。

 遠い異国の植物がこの近辺で見つかる幸運など、作り出せるはずもない。

 ルナが落胆するのも時間の問題だ。




 二人は、いつの間にか、城壁の門を抜けて町の外に出ていた。

 畑の間を通る街道を進む。

 前方に山が見えてくる。


「あの辺りに生えてそうな予感」


 ルナは、山を指さしながら意気揚々と歩む。


「人のよく通る峠だし、どうかなあ」


 アレクは、呆れた様子で後に続く。


「まあ、とにかく行ってみようよ。

 何かあるような予感がするんだよねえ」


 ルナの笑顔は自信に満ちているが、果たしてどうなることやら。

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