第2話 一応、冒険者なんだ

 アレクは、よろめきながらギルドのラウンジに出た。

 いくつかのテーブルが並ぶ、レストランのような場所だ。

 多くの人が、会話や食事を楽しんでいる。

 アレクを気遣う者はいない。

 ギルドでの暴力沙汰は珍しくないからだ。


「幸運付与師のはずなのに、自分がこのざまじゃなあ」


 情けなさそうに心の中でつぶやく。


「とにかく、仕事でも探すか」


 ギルドの掲示板に募集の公告がないかを確かめに行く。

 しかし、都合よく自分に向いた仕事はない。

 がっくりと項垂れる。

 仕方なくギルドの建物の外に出る。


 その時、アレクと同時にギルドの門をくぐった人がいた。

 アレクと同世代の女の子だった。

 肌の露出の多い動きやすそうな服装からして、女冒険者らしい。


「あなた、その様子だと、いい仕事がなかったとかですか?

 お互いソロだと大変ね」


 気さくに話しかけてくる。

 アレクは、その明るい雰囲気に少し驚く。

 今の自分と正反対な様子が変に思えてしまったのだ。


「ええ、まあ」


 アレクは、人と話す気分ではなかった。

 軽く返事をして、やり過ごそうとする。


「どうしても植物の採集がしたいんだけど、あたし一人じゃちょっと不安でね。

 でも、そんなのに付き合ってくれる人もいなくて。

 みんな、もっとかっこいいことをやりたがるのよ」


 少女は、一方的に話し続ける。

 ぐいぐい来る感じだ。

 顔を見ると、結構可愛い。

 サイドテールの髪型には、冒険者としての気合いがにじみ出ている。


「あ、そうだ!

 あなたが、あたしと一緒に来てくれませんか?」


「僕がですか?」


 アレクは、誰かと行動を共にしたい気分ではなかった。

 しかし、断る理由も思いつかない。

 少女も怪しい人ではなさそうだ。


「まあ、いいけど」


「よかったあ」


 少女は、幸せそうな笑顔で微笑む。

 アレクは、その笑顔に心が癒やされた気がした。


「あっ、まだ名前を言っていなかったわね。

 あたしは、ルナ・エル・レジナルド。

 これでも、一応、冒険者なんだ」


「そうなんだ」


 アレクも、自己紹介をする。

 さらに特級冒険者パーティーを解雇されたばかりであることも告げる。


「えーっ、いきなりクビだなんて酷い」


 ルナは、自分のことのように憤慨する。


「仕方ないよ。

 僕の実力不足のせいだし。

 特級冒険者パーティーになんて加えてもらえてたのが、そもそもおかしかったんだ」


「そうかなあ。

 あたし、何となくだけど、アレクって凄い人だと思うんだけどな。

 雰囲気っていうか……」


 ルナは、納得できないといった表情だ。


「ところで、植物の採集ってことだけど、何をするの?」


「そうだった。

 あたしが探してるのは、サンダーニカっていう植物なの。

 ある人の依頼で探してるんだけど、凄い効能の薬になるらしいの」


「えっ、サンダーニカだって?」


「知ってるの?」


「この大陸にはない植物だよ。

 エンブダイという大陸にあると言い伝えられているけど、そもそもエンブダイ大陸に行く方法すらわからないからなあ」


「そんなあ……」


 ルナは、がっくりと項垂れる。

 それを見て、アレクが言う。


「でも、もしかしたら、なんとかなるかもしれないよ」

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