巻咲かえでの可能性に賭けたんだ④
第七課 逆順により 先攻は章介だが
カードはなかった。ビターオペラ招聘に賭けていたから、後は結果待ちだけ。
「なあ、かえで」
「なあに」
「生きていて楽しいか」
「それは有利だからの余裕ぶり」
「違うよ、昔友達が言っていた言葉があってさ。お前何のために生きてる、他人のためか、違うよな 自分が泳げるように生きたいから生きるんだよって、自分から命を捨てる前の人間の台詞じゃないよな。俺さ涙が止まんないだよ。あの時、何か言葉をかければ良かったって」
「木田君、話すことにしたのか。雨谷君のことを」
「会長は知っていたんですか?彼の親友の」
「雨谷翔琉、自分から命を絶った若者であり、彼のアイデアが簿記札の原典になった。だが、遺族からはそれを隠蔽して欲しくてね。それに章介君からも頼まれたんだ」
2年前、雨の中の告別式の帰りに
「会長、お願いします。翔琉のことは口外しないでください。あいつの親友でいるために」
「辛い道のりになるぞ」
「辛い道のりは、野球を辞めた時に決めてました」
「そうか」
その経緯を聞いたかえでから笑みや余裕が消えた。
「章介君、そんなことがあったなんて。私バカだよ、前向きに戦いたいなんて言ったから」と大粒の涙が溢れて止まらない。
「かえでは悪くない、これは俺の弱さだよ。心の中の」
「心の弱さか」
そして、最終課
かえではしんみりした空気を破壊するために、一括合成カードを出す。
「ペアリングの条件は揃い、ビターオペラに負けないバディを招聘する 出てきて!小悪魔な天使」
素材のだだこねり悪魔と天使のスイーツソムリエを一括合成し、小悪魔な天使を出す
「可愛いんだよ。わたしのバディに相応しいから選んだんだ」
合計数値は 一括合成費収入70000 素材元の天使のスイーツソムリエが12000、ただこねり悪魔23000と計算し、35000追加で70000となった。
「ま、負けるのか 嫌だ でもでも」
戦巧者で経験者の章介が久しぶりに見せた動揺を無視し、判決を下す
「86000だよ でもね。届かなかった少しだけ ほんの少しだけ」
動揺した章介に言葉は届いてない。
しかし、敗北したのは
かえでだった。
「終わったのね。まだやりたかったな章介」
「かえでーーーー」
つづく
簿記札 第1課 1話 taisuke @seidat
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