あなたの好きは、誰のもの

高校生の主人公・奏多は、最近どうにも自分の「好き」が揺らぎ続けている。
嫌っていた芸能人が急に好ましく思え、興味のなかった商品が買いたくなり、
気づけばタイムラインは自分の嗜好を“肯定してくれる投稿”ばかりになっていた。

そんなある日、奏多はSNS上の友人たちと意見が奇妙に一致しすぎていることに違和感を覚える。
ただの偶然か、それとも……。

違和感を辿るうちに、彼の周囲の人間まで“同じ言葉を使い、同じ感想を抱き、同じ表情で笑っている”ことに気づく。
だが、本人たちはそれを不気味だと言うことすらできない。

やがて、奏多は思い知る。
「自分の常識」だと思っていたものはすべて、“外側”から書き換えられていたのだと。

そして、物語は読者に問いかける。

――あなたの好きは、本当にあなたの心が選んだものですか？