闇クエストのウワサ! 女性冒険者拉致で高額報酬!?

 植物プラントポーションを地面へ投げた。

 それは直ぐに変化を起こし――植物モンスターへと姿を変えた。


 うにょうにょの触手を持つ吸血植物。

 コイツはしつこいほど相手を追いかける特性があるので、ギョロ目に向けられればこっちの勝ちだ。

 ちなみに、本当に血を吸うのではなく『体力』と『魔力』を吸収する植物だ。



『……ォォォ』



 魔改造されたヒマワリみたいな大きな植物が、ギョロ目男に向かっていく。物凄いスピードで。



「な、なんだこのモンスターは! いつの間に沸いたんだ!? ぐ、あぁぁぁあっ!」



 よし、触手が絡みついている。

 ヤツの『体力』と『魔力』を吸収し、弱体化させている。しかも身動きができていない。触手が強力すぎるからだ。

 いいぞ、その調子だ!

 今の内にこの場を離れる!



「いくぞ」

「は……はいっ」



 俺は聖女と名乗るエリーズを連れていく。無事に救出できた。



 そして、その最中に思い出した。あの傭兵の名前は斧使いの『シルヴァン』だ。ヤツを倒したことは直ぐにギルドに伝わるはず。となると、ヴェナンが俺を討伐しに来るかもしれない。


 厄介なことになったかもしれないなぁ……。


 こうなると、もっと遠くへ行く必要がある。



 荒野を抜け――街が見えてきた。



【最果ての街:エクストレーム】


 気づけば、ここまで来たか。歩き疲れたな。

 この最果ての街は安全だ。

 どこか休める場所を探す。

 あの噴水の近くにあるベンチで休もう。

 椅子に腰かけ、俺は乱れた息を整えた。



「……ふぅ。エリーズだっけ」

「はい、そうです。あなたはロワ様ですよね」

「ああ、改めて錬金術師のロワだ」

「よろしくお願いします」


 ぺこりと丁寧に頭を下げるエリーズは、かなり姿勢が良かった。……いや、それよりもだ。こんな可愛い子がなぜ襲われていたんだ。


「あの傭兵とは知り合いか?」

「いえ。わたしはただ岩の街ロシュの場所を知りたくて……」

「それで襲われたの!?」

「はい。あの男性は若い女性を狙っているみたいでした」


 ……ヴェナンのヤツ、傭兵を使って女性冒険者を拉致でもしているのか? それとも単に乱暴を? どちらにせよ、これはキナ臭いぞ。

 もしかしたら、ヴェナンの悪事を明らかにできるかもしれない。


「君は確か、義理の兄を探しているんだっけ」

「そうなんです。手がかりは岩の街ロシュだけなんです」


 となると戻る必要があるかもしれない。

 そうなればヴェナンと戦闘もありえる。俺はあの傭兵に手を出してしまったからな。

 だけど、これはチャンスかもしれない。


 ヴェナンの……ギルドの悪事を暴ければ、奴らを追い詰められるかもしれない。


 そうなれば俺のこのモヤモヤした気持ちも晴らせる。

 ソレンヌの気持ちももう一度だけ確かめたい。


 ……答えは分かっているけど、それでもだ。



「エリーズ。君の義理の兄を探そう」

「えっ、でも」

「大丈夫。俺も岩の街ロシュに用があるんだ」

「ではっ」

「ああ、ただし……さっきみたいな危険な目に遭うかもしれない」

「……ですよね」

「俺が君を守るさ。あるギルドを調査したい」

「わかりました。わたしも手伝います」

「いいのかい?」

「はい。さっき助けていただいたお礼です」



 エリーズと握手を交わした。

 これで決まりだ。


 俺この聖女と名乗るエリーズとペアを組む。そして、義理の兄を探し出す。そのおまけで元所属していたギルドの……ヴェナンのやっていると思われる罪を暴き出す。


 よし、今日のところは宿屋で一泊だ。



【最果ての街:宿屋】


「……おい、どうなっているんだ」


 宿屋へ入ると店主が困り果てていた。なんだか深刻そうな表情だな。


「どうしたんです?」

「冒険者の娘が帰ってこないんだ」

「え……それって」

「最近噂になっているんだ。あるギルドが女性ばかりを狙い、拉致していると」


 ――な! やっぱり!

 この最果ての街ですら影響を受けているんだ。

 やはり、俺が所属していたあのギルドがヤバいことをしているに違いない。


「それ、詳しく聞かせてください」

「……あ、ああ。その噂によるとだがな……『闇クエスト』が流行っているらしい」

「闇クエスト……」

「法律で禁止されている薬物アイテムの入手、取引……女性を拉致って奴隷商に売り飛ばしたり……。聞いた話ではかなり稼げるらしい闇のクエストだ」


 そんなものがあったとは……!

 もしかして、ヴェナンが元締めだとかじゃないだろうな。

 だとしたら、俺はなんてヤツと関わっていたんだ。

 まだ確たる証拠がないが……あの傭兵の存在を見てしまったから少し疑ってしまう。それに、実際被害に遭ったエリーズもここにいるんだ。


 可能性はゼロじゃない。


「なんだか怖いですね、ロワさん」

「そうだな。俺の所属していたギルドが犯罪を犯していたかもしれん」

「え……」

「でも俺は追放されたんだ」

「そうだったんですね。ごめんなさい」

「いや、もし犯罪組織だったのなら今は清々しているさ」


 こりゃ、直ぐにでも証拠を集めてみるか。

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