声が出せない呪われた吟唱巫女ですが、ハイスペックな天才軍師から『君の本物の声を取り戻してやる』と激甘溺愛され、沈黙の世界を【最強の歌声】で救うようです
俺の声が敵の切り札!?だったら全員まとめてぶっ潰す!
俺の声が敵の切り札!?だったら全員まとめてぶっ潰す!
「同時に……三つの**『声』**だと?」
シグナの声に、全員が息を呑んだ。
広場の中央に据えられた旧式の**『声導具』**から、三方向に裂けるように放送が重なって響いていた。
『我々は孤立している。仲間を求める――』
『この放送は王家の命令に基づくものである――』
『南部の生存者は危険だ。排除せよ――』
どれも、レンジの声。
だが抑揚や息遣いが微妙に異なり、まるで別人の心が同じ肉声を通して語っているようだった。
「ぜんぶ……僕の声……?」
レンジは青ざめ、喉を押さえる。
私は耳を澄ませる。
どれも本物のように聞こえるのに、胸の奥がざわめく。
“盗まれる感覚”。私の呪いと同じ、冷たい手が声を引き裂いて操っている。
◆
群衆の混乱は一瞬で燃え広がった。
「最初の声だ! 孤立してるんだ、助け合うしかない!」
「いや二つ目が正しい! 王家の命令に逆らうな!」
「三つ目を信じろ! 裏切り者を排除しろ!」
老人が杖を突きながら「従え」と叫ぶ。
若者が血走った目で「共に立ち上がれ」と反論する。
怯えた母親が子どもを抱えながら「排除しろ!」と声を上げる。
叫びは次々とぶつかり合い、石が飛び、誰かが倒れる。
助けようと伸ばされた手が殴られ、怒りが伝染していく。
沈黙よりも恐ろしい“分裂”が、今まさに形をとり始めていた。
私は喉を押さえた。
救いのための声が、呪いのように人を裂いていく――。
それは、声を奪われてきた私自身の痛みと重なった。
◆
「やめろ!」ノイズが必死に人波へ走ったが、押し返される。
シグナが解析盤を睨み、低く告げた。
「ただの模倣じゃない。声の内容を変質させ、レンジの声で流している。狙いは……人々を分断することだ」
ユキは震える唇をかみしめながら呟いた。
「“沈黙の雷”で最新の**『魔導具』**は死んだ。でも旧式の回路は生き残った……だから、今一番響くのは――レンジの声……」
その事実に、レンジは膝をつきかける。
「僕の声が……人を争わせてる……?」
彼の呟きに、胸が締めつけられた。
◆
その時、マルが群衆をかき分けて叫んだ。
「戦おうよ! 奪われっぱなしで終わりなんてごめんだ!
私たちの**『本物の声』**で、正しいことを叩き込むんだ!」
私は息を吸い込み、彼女に続いた。
「……私も戦う。自分の**『声』**を、もう偽物に縛られたくない!」
ノイズも歯を食いしばって頷く。
「音で攻撃できるなら、俺にだってやれることはある!」
シグナは冷静に宣言した。
「戦術は私が組む。偽りの声を上書きする“本物”を届ける。そのために技術を尽くす」
ユキも拳を握りしめる。
「怖いけど……今度は私の声で、誰かを守る!」
◆
レンジは立ち上がり、震える手で**『声導管』**に触れた。
瞳にはまだ迷いが残っていた。
けれど、その奥には確かな光が灯っていた。
「奪われたなら、奪い返す。俺は……俺の声を取り戻す!」
その瞬間、私たちは初めて自分たちの放送に名を与えた。
《この声だけが、世界に届いている》
――それが、“声の戦争”の幕開けだった。
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声が出せない呪われた吟唱巫女ですが、ハイスペックな天才軍師から『君の本物の声を取り戻してやる』と激甘溺愛され、沈黙の世界を【最強の歌声】で救うようです 寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった @marineband14
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