沈黙の正体?ただの自然現象じゃない。誰かが仕組んだ“声の罠”だ

岩窟の放送室は、まだ熱を帯びていた。

残響の解析を進めるシグナの手は止まらず、盤面の光は複雑な線を描いて揺れている。


ノイズが古びた部品を乱雑に並べ、ため息をついた。

「何度見ても腑に落ちねえ。雷が全部の機械を壊したはずなのに、なんで旧式だけが生き残ってんだ?」


シグナは視線を盤から上げ、落ち着いた声で答える。

「“沈黙の雷”は高密度の魔導波を含んでいた。新しい回路ほど感応しやすく、壊滅的な損傷を受ける。でも旧式の回路は粗雑で、逆に壊れにくかった。それを利用した者がいたのだと思う」


マルが両手を頭に当てて大げさに叫ぶ。

「えー!? じゃあ最初っから仕組まれてたってこと? 人の声を封じるために雷まで利用するとか、悪趣味にもほどがあるじゃん!」


ユキが怯えたように小さく首を振る。

「でも……本当にそんなことができるの? 自然の雷じゃないの?」


私はユキの手を握りながら、胸のざわつきを抑えようとした。

確かに信じがたい。でも残響が実際に人の心を狂わせているのを見た今、疑う余地はなかった。


レンジが低い声で口を開く。

「つまり……“沈黙”は、ただの天災じゃない。誰かが人の声を閉じるために仕組んだ“罠”だってことか」


その言葉に、岩窟の空気が重くなる。

外の街では、いまだに混乱の叫びが渦巻いているはずだ。その叫びを誘ったのは偶然じゃない。意図的に広められたもの。


シグナが符を示しながら補足する。

「残響のフレーズは単純な繰り返しだけではない。人の恐怖や孤独に合わせて強調点を変えている。これは“誰かが聴き手を理解している”証拠。つまり送信者は、ただ声を流しているだけではなく、心を狙っている」


ノイズが唇を歪める。

「心を狙う放送……戦場で使われる心理兵器みたいなもんか。嫌なやり口だ」


マルは拳を振り上げて言った。

「だったら逆にやってやろうよ! 人を操る声があるなら、人を救う声だってあるんだって!」


その言葉に、私は胸を強く打たれた。

――確かに、私たちには救われた経験がある。あの時レンジの声がなければ、私は立ち上がれなかった。


「……本物の声を重ねれば、残響に抗える」

自分でも驚くほどはっきりと、そう言葉が口から出た。


レンジが頷く。

「俺たちが放送する意味はそこにある。奪われた声を取り返すだけじゃない。残響に覆われた世界に、本物の声を響かせるんだ」


ユキの目に小さな光が宿る。

「私も……怖いけど、やる。今度こそ、自分の声で誰かを守りたい」


ノイズは肩をすくめつつ、機材を叩いてみせた。

「なら決まりだな。機械は俺が何とかする。お前らは遠慮なく叫べ」


マルは元気よく手を挙げ、シグナは冷静に頷く。

私は胸に手を当て、喉に絡みつく鎖の感触を思い出した。

それでも――声を上げたいと、強く願った。


沈黙は偶然じゃない。

ならば私たちは、それに立ち向かう意思を示さなければならない。

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