声が出せない呪われた吟唱巫女ですが、ハイスペックな天才軍師から『君の本物の声を取り戻してやる』と激甘溺愛され、沈黙の世界を【最強の歌声】で救うようです
不穏な残響?どうやらこの沈黙、誰かが意図的に広めたようです
不穏な残響?どうやらこの沈黙、誰かが意図的に広めたようです
放送室の空気は重たかった。
かつて賑やかに声を響かせていた岩窟も、今は石の壁が冷え冷えと沈黙を反射している。
私たちは古びた声導管を前に並び、耳を澄ませていた。
シグナが解析盤に手をかざし、目を細める。
「……見えるか? この波形。単なる雑音じゃない。規則性がある」
盤面に刻まれた光の線は、不気味なほど整った揺らぎを描いていた。
私にはただのざわめきにしか聞こえない。だが、繰り返される断片に心臓が妙にざわつく。
ユキが小声で読み上げた。
「『沈黙は広がる』『恐れるな』『従え』……同じ言葉が繰り返されてる」
ノイズが舌打ちした。
「ただのノイズじゃねえな。誰かが意図的に仕込んでやがる」
胸が冷える。
――これが偶然ならどれほどよかっただろう。
だけどこの声は、確かに私たちの心に入り込もうとしていた。
言葉が呪文のように反復され、意識の奥に染み込んでくる。
気づけば喉が勝手にひきつり、声を閉ざしたくなる。まるで私の呪いと重なっていくかのようだった。
「……“残響”。」
シグナが低く言葉を置いた。
「過去の声を組み替え、感情を操る心理的兵器。沈黙の中で流せば、人々は疑うことなく刷り込まれる」
マルが眉をひそめる。
「ふざけんなよ。声を武器にするなんて」
ノイズが拳を握りしめ、配線を睨みつける。
「沈黙の雷で最新の声導管は壊滅した。けど、粗雑な旧式の回路は生き残った。奴らはそこに割り込んで残響を流してる。偶然じゃねえ、戦術だ」
レンジが歯を食いしばる。
「声を奪うだけじゃなく、従わせるために……」
私は息を詰めた。
沈黙に覆われたこの世界が、さらに操られていたなんて。
声は奪われ、ねじ曲げられ、利用されている。
私の呪いもまた声を奪う力――それと何が違うんだろう。
ユキが俯きながら、勇気を振り絞るように口を開いた。
「……怖い。でも、私も声を出すよ。今度は、誰かを助けるために」
その決意に、レンジは力強く頷いた。
「俺たちがやるべきことは一つだ。残響に上書きする“本物の声”を流す。嘘じゃない、生きている声を」
シグナが記録盤を指差す。
「残響は完全に均質化された声。だが人の声には揺らぎがある。息遣い、鼓動、心の震え――それは模倣できない。
僕たちの声を重ねれば、必ず打ち破れるはずだ」
ノイズが工具を持ち直し、にやりと笑った。
「よし、やってやろうじゃねえか。回路を洗いざらい叩き直して、本物の声を通す」
マルも拳を振り上げる。
「上等だ! 沈黙ごと吹っ飛ばしてやる!」
私は深く息を吸い込んだ。喉はまだ強張っている。
それでも、もう逃げたくなかった。
「……私も行く。呪いがあっても、声を合わせる」
灯火の下で、私たちは準備を進めた。
古びた声導管がかすかに脈打ち、解析盤の光が点滅する。
その光はまだ小さい。けれど確かに、沈黙を打ち破る兆しだった。
――この沈黙は偶然ではない。誰かの悪意が仕掛けた残響だ。
ならば、私たちの声で必ず打ち消す。
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