声が出せない呪われた吟唱巫女ですが、ハイスペックな天才軍師から『君の本物の声を取り戻してやる』と激甘溺愛され、沈黙の世界を【最強の歌声】で救うようです
僕の声に似た放送?いや、それは盗まれた“声”そのものだった
僕の声に似た放送?いや、それは盗まれた“声”そのものだった
私たちは、ノイズの岩窟を「声の一座」の拠点とした。
レンジが「魔力車輪」で魔力を生み出し、私は声導管に共鳴を与える。
ノイズは壊れた部品を拾い集め、古代の回路を組み直す。
少しずつ形になっていく放送は、まだ不完全で途切れ途切れだったけれど――沈黙に覆われた世界に確かに小さな響きを取り戻し始めていた。
「……聞いている誰かがいたら、返事をください」
レンジは放送の最後に必ずそう呼びかけた。
けれど返答はまだ一度もなかった。
沈黙の街に、声が届く日は来るのだろうか――そんな不安が胸をよぎった矢先のことだった。
◆
「レンジ、あや! ただ事じゃねえ!」
息を切らせて駆け戻ってきたノイズが抱えていたのは、壊れかけの「魔導放送水晶」だった。
ひび割れた表面が淡く脈打ち、そこからかすかな声が漏れている。
『……これは国の公式放送である。従わぬ者は異端とみなし、速やかに報告せよ』
その瞬間、レンジの顔が蒼白に染まった。
「な……これ、僕の声……?」
確かにそれはレンジの声だった。
だが、私にはすぐに分かった。――あれは“似せた”ものではない。私の呪いと同じように、声そのものを“盗み取った”響き。
「これはコピーじゃない。あなたの声を奪って、操ってる」
私が言うと、レンジは悔しそうに拳を震わせた。
「……わかる。僕の声にない、冷たい歪みが混じってる」
ノイズは水晶を睨みつけ、低く吐き捨てた。
「ただの模倣じゃねえな。俺が修理した回路に残ってた歪みと同じだ。誰かが直接“声”を盗み、加工してる」
◆
胸が冷たくなった。
沈黙を破ろうとしているのは私たちだけじゃない。
その裏で――声を奪い、操り、支配しようとする者が確かに動いている。
レンジは額に汗をにじませ、水晶に向かって叫んだ。
「ふざけるな! これは僕じゃない! 偽物だ!」
けれど、水晶から流れる“もう一人のレンジ”の声は止まらない。
『沈黙に従え。声を上げるな。それが唯一の救いだ』
その冷たい響きは、私たちの放送の真逆だった。
声をつなぐのではなく、声を断つための声。
私は喉を押さえた。
――これが人々の耳に届いたら、どれほど恐ろしいことになるだろう。
沈黙の世界に、さらに深い沈黙が押し寄せる。
「……私たちの声は、もう聞かれてる」
かすれる声でそう言うと、ノイズが頷いた。
「そして狙われてもいる。遊びじゃねえ、これは戦いだ」
レンジは震える手で声導管を掴んだ。
その瞳に、悔しさと決意の光が宿っていた。
「なら、証明するしかない。本物の声がここにあるってことを」
沈黙の雷が壊したはずの世界で、再び“声の戦い”が始まりつつあった。
◆
私は胸に手を当て、深く息を吸った。
呪いに縛られたこの声でも――必ず響かせてみせる。
偽物に奪わせたりしない。
こうして、私たちは初めて“声を奪う敵”の存在を知った。
それはただの偶然や自然現象ではなく、意図的に仕組まれた“声の罠”だったのだ。
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