第5話

 いつの間にか眠っていた彼女は、

 腰に提げたポーション瓶に、

 透明な液体が入っていることに気付いた。

 振ってみると、キラキラした。

 窓を閉め切っているから陽は入らない。

 しかし、その液体は輝いていた。

 蓋を開けると焼き立てのパンのような

 温かくてすっきりとした香りがした。

 ごっくんと一口に飲み干してみると、

 それはとても甘い味がして、

 澄み切った感じで喉を過ぎていった。

 身構えたけれど、苦痛は訪れなかった。

 とても優しい気持ちになった。

 ふわふわとして、心地よかった。


 そして魔女は疑問に思った。

 誰の口にも瓶を突っ込んでいない。

 なのになぜ言葉がたまったのか。

 なぜ黒い靄ではなく透明な液体なのか。


「いいこだね、魔女っていうのは、そのような言葉を使ってはいけないよ」


 カタシェは記憶を辿って、

 あの男が言っていたことを反復した。

 反復できてしまったということは、

 奴から言葉をもらえたということだ。

 どうして?口に突っ込んでいないのに。


 あの白い服の男にまた会うために

 魔女はまた村に降りていった。

 あてもなくウロウロとしていると、

 遠くの方から件の白服の男が

 誰かに連れて来られてやってきた。


「また来たのかい?」

「私、魔女」

「うん?魔女さんなのかな?」

「そう、私、魔女」


 ふと腰の瓶に視線を流すと、

 やっぱりキラキラの液体が入っていた。

 彼女は家で書いてきた手紙を彼に渡した。

 手紙と言っても、あるのは一行だけ。

 言葉を教えて欲しいというお願いだけだ。


 それから彼女はしばらく、

 男の教会での仕事の傍らに、

 色々と言葉を教えてもらうことにした。

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