LOG.5 ー 嘘 ー The Lie



——実話。

俺と、現役モデルと、不倫と…。


こんな人生で、マトモは無理。


たった一度の出会いで、人生が壊れた。


これは、その記録。

————




ミカから突然LINEが来たのは、

前触れもなく、深夜1時すぎだった。



ミカ

『ねぇ、シンさん。

 月曜ひま〜?』



シン

『空いてるよ!』



送信してから1秒後に既読がついた。



ミカ

『即レス♡えらい〜

 じゃあ港いこ。

 生牡蠣たべたーい!!』




シン

『了解です!』




本当は嬉しくて嬉しくて しょーがないので





ブヒー!ミカ様!

嬉しいですぅ~!

豚野郎、大歓喜~!




と、返信してもいいくらいだったが我慢した。




ミカ

『やったぁ♡

 じゃ、決まりね。

 月曜休みでしょ?迎えにきて?』




“迎えにきて?”

この一言の吸引力が異常だ。




シン

『家どこらへんなの?』




ミカ

『近くのコインパーキングまで迎えきて!』



シン

『なんでパーキング?』

『家の前まで行くよ?』




ミカ

『いーの。家の前はダメ。』

『返事は、わん でしょ?』




シン

『わん』




ミカ

『よし♡ワンちゃん偉いね♡

 楽しみにしてる〜』






ーーー





月曜の昼前。


俺はミカの家の

“近く”にあるコインパーキングで待っていた。


ミカが指定してきた場所だった。




“家の前はだめ” の理由は聞けなかった。


嫌われたくなかった。



ただ…


誰かに"嘘をついてデート"していることは

アホな俺にも明らかだった。



だから「なんで?」の一言すら言えないまま、

コインパーキングに車を止めてミカを待った。





ーーー



10分後。


アパートとマンションが混ざった

住宅街の影から、

ちょこんと小柄なシルエットが現れた。


ミカだった。



ピタッとした黒のワンピ。


ミカお前、好きだよな、その格好。

海沿いへ行くにしては寒そうな格好だ。


寒くても自慢の長い足は出す。

ミカのポリシーなのかもしれない。



そして手には……

異常にデカいバッグ。


旅行?お泊まり?

どう見ても1泊2日のサイズ。



何が入ってんだ……?



疑問は喉まで来たのに、

声にはできなかった。


ミカが俺の車を見つけると、

パァーッと笑顔になって駆け寄ってくる。


ミカが助手席のドアを開けた瞬間、

車内にふわっと"ミカの香り"が広がった。



ミカ

「お待たせ〜!」


シン

「あ、うん……」


ミカ

「よいしょ!おもっ!」


ミカがバッグをドスッと後部座席に置く。


重そうだった。




なんでこんな大きいバッグ?

何の準備?

そもそもミカの車ここにあるのなんで?




でも言えない。絶対に。



ミカ

「じゃ、いこっか♡」




シートに座りながら、

スマホを胸元で抱え込むように隠している。


その動きひとつひとつが、

“触れてはいけない秘密” のような気がして

なんだか切なかった。




ーーー




車が走り出す。


港までは約1時間。


助手席のミカは

窓の外を見ながら足をパタパタさせていた。


バッグはデカい。

ミカの車がコインパーキングにある。

家の前は絶対に来るなと言われた。


全部つながらない。

でも問い詰めたら終わる気がした。




事務所に見つかるから……?

それとも彼氏…?旦那…?

いいや。聞くな。 嫌われるのがいちばん怖い。




ミカは俺の顔を一瞬チラ見すると、


不意に

肘置きに置いてる俺の左手をキュッと握った。



ミカ

「楽しみだね〜♡

 ねぇ、港ってどんな所〜?」



その一言とボディタッチで、

抱えていた不信感が

すぐに溶けていくのがわかった。



アホみたいに、簡単に。



シン

「あぁ……まぁ、景色めっちゃいいよ」




ミカ

「ふふ♡ たのしみ〜」

「あー早く牡蠣食べたい~!」



笑うと目がなくなる。

その笑顔に全部飲まれる。




そして俺は気づく。


この女は、危険だ。


俺が疑問を持つ余白を一瞬で吹き飛ばす。

“考える隙” を与えない。


わかってても、抗えない。



港までの1時間、

俺はずっと胸が痛くて、

ずっと浮かれていた。


そしてこの“嘘の匂い”は、

この先の破滅の序章にすぎなかった。

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2025年12月15日 21:30
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不倫の神様 不倫の神様 @furinnokamisama

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