LOG.4 ー ミカ女王様 ー The Queen Mika
——実話。
俺と、現役モデルと、不倫と…。
こんな人生で、マトモは無理。
たった一度の出会いで、人生が壊れた。
これは、その記録。
————
バーで別れたその夜。
代行が運転する車の中で、
俺はずっとスマホを握りしめていた。
『さっきはありがとうございました』と送った。
既読はつかない。
たぶん今日、返信は来ない。
そう思いながら風呂に入り、ベッドに倒れ込み
気絶するように眠った。
ーーー
翌朝、スマホが震えた。
──ミカからのLINEだった。
ミカ
『昨日はありがとうございました!
飲みすぎて顔むくむくです笑
シンさん…記憶ありますか?』
ゼロ秒既読で返信した。
シン
『ありますあります!
むしろこっちが緊張しすぎて……
すみません…』
嘘!調子に乗って呑みすぎたから記憶無い!
すぐに返事が来た。
ミカ
『いいのいいの〜
アタシも酔ってたし笑
それより、お店ってどんな感じ?
撮影の前に遊び行きたい!』
来た。
“あの軽さの甘い誘惑”が
LINEでも炸裂している。
シン
『え、見に来るんですか?
全然いいですよ!』
いやホントは、全然、よくない。
今にも心臓が爆発しそうだ。
マスターへの罪悪感も相まって。
ミカ
『わーい!行きたい行きたい!
もちろんお金払うよ?
お客さんとして行ってもいい〜?』
シン
『いや払わなくて大丈夫です!
撮影モデルしてくれるんだから……!』
ミカ
『じゃあ…お客さんとして行くのはナシね?
フフ、じゃあ普通に遊びに行く♡』
この“遊びに行く”の一言で、
胸の奥がキュッと掴まれた。
ーーー
ミカはラインのあと、本当に店に来た。
ミカ
「あぅ~背中気持ちいい~…」
シン
「めっちゃ固いね、スマホ触りすぎですよ」
うつ伏せでも、なんだろう何故か
ミカは後頭部すら可愛い。
猫の後頭部が可愛く感じる、
あの感覚に近い。
ーーー
最初は整体しながら軽い雑談だったのに、
ふいに恋バナへと流れた。
ミカ
「ねぇ、シンさんって彼女いないの?
こんなに優しいのに〜」
シン
「まぁ……いないですね。」
「なんでいないのか、こっちが聞きたいよ…。」
ミカはうつ伏せのまま、
足をパタパタさせながら言った。
ミカ
「アタシさ〜、彼氏いらないんだよね〜」
シン
「え、なんで?」
ミカ
「だって彼氏って、自由が無くなるじゃん。
束縛されたり、色々面倒でしょ?」
「形式ばった あの関係値がイヤなのよ。」
シン
「まぁ…確かに……」
ミカ
「だからアタシは“犬”がほしいの!」
シン
「……犬?」
「犬って犬?」
ミカ
「犬!ワンちゃん!
ペットじゃなくて人間のワンちゃん!
アタシの言うことなんでも聞いてくれる、
アタシだけのワンちゃん♡」
「束縛しないし、裏切らないし、
甘えてくれるし……
ミカはずっとワンちゃんと暮らしたいの。」
シン
「そ、そうなんだ……?」
ミカ...お前まだ酔っ払ってんのか?
ミカ
「ミカのワンちゃん……
どっかにいないかなぁ〜♡」
わざとらしく言う。
その言い方はどこか寂しげで、
でも期待してるようにも見えた。
その瞬間だけは、
本当に子供みたいな無邪気さがあった。
なんだか…少し、感情移入してしまった。
君は…何か辛いことがあって、
この思想にたどり着いたんだろうな。と。
ーーー
施術が終わると、
ミカは気持ちよさそうに伸びをした。
ミカ
「ん〜!!めっちゃ肩スッキリした〜!
ありがとうシンさん〜!」
シン
「い、いえ……!」
ミカ
「またLINEするね?
無視しないでよ?
すぐ返信してね?」
シン
「うん、すぐに返すよ」
ミカ
「……違うでしょ?」
急に不安そうな顔を見せるミカ。
シン
「え?」
ミカ
「“ワン”は?♡」
目が無くなるくらい満面の笑みで聞いてくる。
ミカの八重歯が可愛い。
でもな…そんな甘くねーぞ俺は。
ガキが…舐めんじゃねーぞ…!
大の男が5個年下の小娘に
"わん" なんて言うもんか!
女にペコペコするぐれーなら
死んだ方がマシだ…!
俺様は絶対に、わん なんて、
シン
「わん」
成人男性、人生初の "わん"
ミカ
「フフッ♡ よし。」
そう言って、
出口へ振り返ってドアの方へ向かう。
その背中を見送りながら、
全身のシルエット完璧だな… と思った。
いいケツしてんなぁ…ホント…と、
ミカが美味しそうすぎて、
心でヨダレを垂らしていた。
ファーみたいなモコモコワンピでも
ミカのスタイルは圧巻だった。
見とれて、ボーッとしてた。
ところが――
ドアの前でふいにミカが、
またこちらへ振り返った。
ミカ
「……あっ!」
なにかを思い出したように目を丸くして、
てててッと小走りで戻ってきた。
そのまま俺の胸にふわっと抱きつく。
シン
「…っ!」
ミカ
「胸板もふもふ〜♡
……これ、好き〜」
ベンチプレスばっかやってるから
胸板だけは自慢の胸板だ。
と、いうか
いい匂いすぎる…!!
"ミカの香り" で柔軟剤 販売してほしい…!!
メーカー希望小売価格"2億"とかでも買う...!
ミカ
「落ち着く~…」
無邪気な声。
さっきまでの小悪魔な態度が嘘みたいだった。
数秒だけ抱きついて、
満足したように離れる。
ミカ
「じゃ、またLINEするね。
ワンちゃん、すぐ返してね?」
シン
「うん。あ、わん…。」
ミカ
「よし♡ またね〜」
ミカがドアを開けて出ていく瞬間、
胸がズキンと痛んだ。
その日から、
俺の理性と性癖は確実に壊れ始めた。
"ミカの犬"として 教育されていくことになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます