×××

 勇者、それはおそらく史上最強の生物。


 そんな勇者が...







 土下座した。


「本当に申し訳ない。僕は弱かったばかりに、スミスを死なせていまった!彼は優しく、戦場で誰よりも明るかったのに!」


 何言っているのかよくわからなかった。


「それで、遺言って何だったんですか?」


"この前言ったことを覚えておいてほしい。大切なことだからだ。それと、俺の墓にはたまにミニスカの美女を連れてほしい。下からパンツを見れるようにな"

と、彼は言い残したよ...」


「そうですか...ありがとうございました。帰っていただいて結構です...」


「...では、失礼する。ギルドの酒場に数日通うつもりだ。君が来たときは奢るよ」


「はい...お気遣い痛み入ります」




ー倉庫にてー



「おや、今日は結構遅いですね」


 仮面の男はいつもと変わらない。


「まあ、親友が死んでしまいまして...」


「ん?もしかしてですが、親友は遺言を残しました?」


「え?まあ、はい...」


「黒ですね。親友さん」


「なんでですか?」


「その時の状況を詳しく教えてください。きっと何かヒントがあるはずです」




ー酒場ー



「勇者は酒場で飯を食うと言っていた...」


 案の定、奴は来た。


「あ、ルークさん...奢るよ。僕も、たくさんの大切な人を失った」


 負けるな!挫けるな!この世の理不尽に抵抗しろ!恐怖に抗え!絶望を乗り越えろ!

 勇者に、罰を!


「この外道がァ!俺は知ってるぞ!お前が裏で支配していることも、スミスがお前とグルだったことも!」


 多分、人生で一番大きな声を出した。

 酒場には他の冒険者がたくさん居たが、関係ない。

 こいつの正体を、暴いてやる!


「俺がレイピア使いであること、俺の親友が都合よく死ぬこと、×××、×××、×××!全部お前ら×××の支配しする暗黒社会の...」





「..."陰謀"だ!」




 恐怖に打ち勝った!

 俺は勇者という、圧倒的で強大な悪に立ち向かった!


「事実で何も言えねぇのか!?ほら、なんとか言ってみろこの悪党...」



ドン!



 酒が入って騒いでる冒険者で賑やかな酒場が、一瞬で静まり返った。

 誰もが聞いた重低音。

 勇者が...俺を殴った音。

 人に殴れて身体が浮くとは思わなかった。

 激痛、吐き気がする。衝撃がまだ腹に残ってる。


「僕のことは責めてもいい!でも、君の親友の死を侮辱するな!彼の誇り高き魂を、踏みにじるなァ!」


 俺を含め、みんなが黙った。


「親友が都合よく死んだ?何が都合がいいんだよ!君の話を聞いて、大体察したよ!」


 なんだ..?

 なんで、俺は何も言い返せないんだ?


「自分の安心のために、親友の死を利用するな!」

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