第3話 白兎、現る!

「あ〜っ!まじでどうしよう!」

紅葉は家に帰って、歴史の勉強をしていた。

そこへ哲男が帰ってきて、なんだか騒いでいる。


「どうしたの?」

心配になった紅葉が尋ねると、


「どうしたもこうしたもねぇよ。部活さ、部員ギリギリなのに、一人怪我で試合に出られなくなっちゃって。どうしよう。外部から誰か呼ぶしかないかな?」

哲男は頭を抱えてうろたえていた。


「この学校ってバスケ強豪校だよね?なんで部員少ないの?」

紅葉はそちらに興味がいってしまう。


「おい、そこかよ!まぁいい、仕方がない。教えてやろう。」

哲男は紅葉をじっと見つめる。

「この学校、入学できるやつ自体少ないんだ。しかも野球の方が人気だから、野球部にはいるやつの方が多いんだよ!」

アァッ、と頭を抱え直す哲男。


紅葉は少し可哀想に思った。

「外部の人を連れてきて大丈夫なの?もしよければ、雪兎くんの弟を誘ってみたら?中学生だけど、桜川中学校っていう強豪校のバスケ部のレギュラーなんだ。全国高校生バスケットボール大会に出ることもないだろうし。」


その言葉で、哲男の顔がぱぁっと輝く。

「ありがとう!でも、出てくれるかな…?」


「大丈夫だよ。雪兎に頼めばちょいのちょいだよ。」

紅葉は胸を張る。

「『あの』弟なら絶対大丈夫!」

その謎の自信に、哲男は少し不思議な気持ちになったが、頼りになる妹を持ったと喜ぶ。


――しかし、二人は重要なことを忘れていた。

この大会は「全国高校生バスケットボール大会」。中学生の白兎は出場できないのだ。


翌日、土曜日。


ピーンポーン。

インターホンが鳴ると、眠そうな顔をした雪兎が出てきた。


「なに?」

「やっほー!」

紅葉は元気よく挨拶する。


「おはようございます。今日は話がありまして。」

哲男は紅葉の後ろで、ものすごく真剣に頭を下げる。


「ははっ」

雪兎は少し笑みを浮かべた。


「で、どうしたの?」

「えっと…かくかくしかじか…。で、お前の弟を試合に出したいんだ。お願いします!」

哲男は両手を合わせて拝むようにする。


「あぁ、白兎に聞いてみる。とりあえず上がってよ。」

紅葉と哲男は雪兎の家に上がる。

リビングで、白兎がテレビを見ていた。

髪は白く、目は薄い茶色だ。


「あの子がお前の弟?」

哲男が耳元で尋ねると、雪兎は小さく頷く。


哲男が白兎に近づく。

白兎はふと哲男に目をやる。


「なぁに?」

声変わり前の高い声が響いた。少し警戒心もある。


「えっと…」

哲男がどう切り出すか迷っていると、紅葉が助ける。

「ごめん、白兎くん。その、哲男が頼みたいことがあるみたいで…」

事情を説明すると、


「試合に出てくれませんか?」

哲男は再び両手を合わせる。


白兎の目は冷たく光った。

しかし雪兎も加わり、優しくお願いする。

「僕からもお願い。」


すると白兎の目がキラッと光る。

「お兄ちゃん、いまお願いって言った?言ったよね?」

「わぁ、お兄ちゃんにお願いって言われちゃった!もう最高すぎる!今日が命日でもいいくらいだよ!」


白兎は感情を込め、早口でしゃべる。

哲男は驚き、雪兎と白兎を交互に見つめた。

後ろで紅葉はクスクスと笑う。


「試合に出てほしいから、死なれたら困るなぁ…」

雪兎が優しく言うと、白兎は少し冷静になる。


「えっ?あぁ、そうだった。普通だったら断るけど兄さんの頼みなら…でも無理!だって中学生だもん。」

哲男はハッとした。


「でも、お兄ちゃんに頼まれたから、とくべつに僕の先輩、桜田蒼人先輩を紹介してあげるよ。出血大サービスだからね。」

白兎は少し得意げに言った。


驚く哲男。哲男から見た白兎には神々しささえ宿って見えた

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