28話 悪夢の原因
静まり返った夜。
眠るフローナのすぐそばで、
シェルは“それ”と向き合っていた。
シェル「ついに、のこのこ出てきたな」
闇の奥から、低く歪んだ声が響く。
「邪魔をするな、半妖風情が」
シェル「フローナがな、毎日のように悪夢を見るって言うからさ。
“何かある”とは思ってたが・・・」
ギロリと鋭い視線を向ける。
シェル「やっぱり妖怪が取り憑いてやがったな。
お前だろ? フローナの“正気”を吸い取ってたのは」
「その通りだ。
だが、お前と出会ってからほとんど吸い取れなくなった」
妖怪は、苛立ちを滲ませて続ける。
「お前の強い妖気があると、どうも力が鈍るらしい」
シェル「なるほどな。
俺が防御壁代わりになってたってことか」
シェルは、眠るフローナをちらりと見た。
シェル「どうりで、旅を始めてから悪夢を見なくなったって言ってたわけだ。
俺と丸一日離れた日なんて一度もなかったしな」
妖怪が、低く唸る。
「俺にとって、お前は邪魔でしかない」
シェルは静かに笑った。
シェル「その言葉、そっくりそのまま返すぜ」
一歩、前に出る。
シェル「俺はな、仲間を傷つけられるのが一番嫌いなんだ。覚悟しろよ」
♦︎
悪夢の原因が倒された、次の日。
フローナ「あの、シェル・・・」
シェル「んー?」
フローナ「昨日のこと、私、よく覚えてないんだけどさ・・・ありがとう。メリサさんから聞いたよ」
シェル「そっか。
良かったな、悪夢から解放されて」
フローナ「うん!」
シェル「あんなもん、覚えてなくて正解だよ」
フローナ「あ、でもでも」
シェル「ん?」
フローナ「シェルが守ってくれてるなっていうのは、伝わってたよ?」
シェル「え? どうやって??」
フローナは少し照れたように笑う。
フローナ「本当はね、旅を始めてからも悪夢はあったの」
シェル「え?
でも、無くなったって言ってたよな?」
フローナ「だって悪夢が来るたびに、
シェルが戦って、守ってくれてたから悪夢が悪夢じゃなくなってたんだよ」
シェル「・・・夢に、俺が?」
フローナ「うん」
シェル「・・・いつも?」
フローナ「うん」
シェル「(ぶわっ)」
途端、シェルの顔がカッと熱くなり、みるみる真っ赤に染まっていく。
フローナ「どしたの?」
フローナが首を傾げる。
シェル「何でもない」
シェルは照れを隠すように急いでキッチンへと向かい、
そのすぐ後ろをフローナが付いていくのだった。
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