番外編 我らがバッタ君
シェル「おっ!バッタ君じゃん!!」
葉っぱの上で休んでいるバッタを見つけたシェルが、
子どものように騒ぎ始めた。
シェルがそっと指を出す。
すると、バッタの方からぴょこんと乗ってきた。
そのままシェルは、レンの方へ指を向ける。
レン「うわっ!俺、虫苦手なんですから近付けないで下さいよ!!」
シェル「えー、バッタ君だよ??」
レン「虫は虫でしょうが!」
フローナ「私も虫系はちょっと・・・」
メリサ「もう!早く自然に返してあげなよね!」
コキア「バッタ・・・」
コキアがポツリと呟く。けれど、その表情からは好きなのか嫌いなのか読み取れない。
バッタ君(まったく、騒がしい奴らだな)
バッタ君はシェルの指から、ひょいっと葉っぱへ戻った。
シェル「あ」
バッタ君(俺は、騒がしいのは苦手なんだ)
シェル「ごめんね、バッタ君」
そう、シェルは虫の言葉が分かるのだ。
シェル「またねー!バッタ君!!」
シェルが手を振ると、バッタ君の目がキランと光り、
草の中へピョンッと帰っていった。
メリサ「めちゃくちゃ通じ合ってるよ」
フローナ「さすがと言うかなんというか」
レン「やはり隊長は野生なんですね」
シェル「俺は珍獣扱いかよ・・・」
レン「似たようなものでしょう」
♦︎
帰ってきたアイツ。
森の入口に、シェルたちのキャンピングカーが停まっている。
昼ごはんの片付けをしていた時のこと。
ピョンッ。
何かがシェルの頭に飛び乗った。
シェル「ん?・・・あっ!」
メリサ「え、なんだい!?」
シェルが頭に手を当てると・・・
そこには、見覚えのある緑色の小さな影が載っていた。
シェル「バッタ君じゃん!!」
レン「ちょっ・・・またですか隊長!!」
フローナ「え、あの時のバッタ君?」
コキア「バッタ・・・」
バッタ君(久しぶりだな、全く、相変わらず騒がしい奴らだな)
シェル「フッ、バッタ君もな!」
シェルの手にぴょんと移ると、
バッタ君は何かを訴えるようにカサカサと羽を震わせた。
メリサ「え、何?なんか怒ってる?」
シェル「いや、どうやら困ってるらしい」
レン「虫の悩み聞けるのなんて隊長くらいですよ」
シェル「ついて来いってさ」
フローナ「どこに!?」
♦︎
バッタ君の後をついて森の奥に入ると、
そこにはひっくり返った別のバッタがいた。
フローナ「あ、ひっくり返ってる」
メリサ「えぇ・・・可哀想に・・・」
バッタ君(コイツ、一人じゃ起き上がれない。助けてくれ珍獣君)
シェル「だから珍獣じゃないってば!」
レン「はいはい、ツッコミはいいから早く助けてやって下さいよ」
シェルはひょいとバッタを起こしてやると・・・。
ひっくり返っていたバッタ(た、助かった・・・)
バッタ君(ほら、礼を言うんだ)
ひっくり返っていたバッタ(ありがとう人間!恩に着るよ!!)
シェル「どういたしまして」
♦︎
助けられたバッタは草の影へ消えていき、
バッタ君はシェルの手にもう一度乗る。
バッタ君(また頼むことがあったら呼ぶ)
シェル「おう、いつでも来いよ」
バッタ君(じゃあな珍獣君)
シェル「だから珍獣じゃねぇっての!!」
フローナ「ふふっ」
メリサ「もう、めちゃ仲の良い友達じゃん」
レン「いや、というかもはや森の住人では?」
コキア「バッタ君・・・」
ぴょん、と跳ねて草の奥へ消えていくバッタ君。
その背中は、何となく誇らしげだったという。
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