19話 コキアの拷問にならない話
湿った石の匂いが漂う地下監獄。
足音を殺しながら進むシェル、レン、メリサ。
フローナと出会う前の話だ。
鉄の扉に近づくと、中から湯気がふわりと漏れた。
シェル「ん?何かコキアの匂いに混じってお茶の匂いがするな」
メリサ「えー?牢屋からお茶の匂いってどういう・・・」
シェルは勢いよく扉を開けた。
バンッ!!!
シェル「コキアーーー!!迎えに来たぞ!だいじょ・・・」
そこには・・・
コンクリートの小さな牢の中で正座し、湯呑みを両手で包みながら飲んでいるコキアの姿があった。
コキア「ずず・・・ふぅ・・・」
シェル「なんで牢屋でくつろいでんだお前はーーーっ!!」
コキアは首を傾けた。
コキア「え?他にやることないですし・・・
あ、でも頼んだらお茶はくれました。」
シェル「そっかそっかー、そりゃ良かったなぁって違う!!!」
(ちゃぶ台返し)
シェル「コキア、何もなされてないか?」
コキア「まだ何も・・・あ、でもこれから拷問される予定みたいですよ。・・・ずずっ、確か3時から」
壁に掛けられた時代の止まったような古時計を見上げる。
【現在 2時45分】
一同「「いやいやいや!!」」
全員が全力で手を左右にブンブンと振る。
シェル「みたいですよ、じゃないのよ!絶対にダメだから!ノー!拷問!!」
コキア「でも僕、痛み感じませんし」
シェル「感じなくてもダメなの!怪我は怪我なの!!」
コキア「分かりました」
メリサ「とにかくここから出ようよ。
光も差さないし、こんな場所いたくないよ。」
シェル「ほら、行くぞコキア」
シェルがコキアの手を取って立たせようとすると、
コキアは湯呑みを胸に抱え込んだ。
コキア「せめてこのお茶だけでも・・・美味しいんです。どこの産地なんでしょうね、香りが良くて」
シェル「どれどれ・・・あ、うまいな。
このまろやかさは・・・」
レン&メリサ「「やってる場合かー!!!」」
レン「お茶はいいから早く行きますよ!(怒)」
シェル&コキア「「はーい」」
♦︎
脱出経路に向かうと、
廊下の角で看守役の男とバッタリ鉢合わせた。
看守「おい、なんだてめーら。そこのガキ逃がす気か?」
シェルがコキアを背に庇う。
看守「そいつは痛みも恐怖も感じねぇんだとよ。
いくら拷問しても泣きもしねぇんだろ?
だから別にほっといても・・・」
シェル「ばーか」
看守「は?」
シェルは一歩、前に出た。
声は低いが、怒りが明確に混ざっていた。
シェル「だから守らなくちゃいけないんだよ」
看守「なんだと?・・・」
シェルの気迫に看守が一歩下がる。
シェル「コキアは確かに恐怖も痛みも感じない。
我慢して言わないんじゃない、感じないから言わないんだ!
だから助けてって言えねーんだよ!!」
コキア「・・・」
その声を聞いて、ほんの少し目を見開く。
シェル「でもな。
痛みを感じなくても、恐怖を感じなくても怪我には変わりない。
血を流せば倒れるし、こうやって助けも呼べずに誰かに連れてかれちまう。
放って置いたら死んじまうだろーが。」
シェルは続けた。
シェル「だから俺たちが守る。
例えコキア自身が気づかなくてもな。」
シェルの言葉にレンとメリサも看守を睨み、
看守が怯む。
コキアは、手をぎゅっと握り締めた。
彼の瞳が僅かに揺れた。
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