⑦世界の終わりを傍観していてはいけません

 女神が去ったあと、魔竜は己の行いをいていた。


「我が生命いのちを喰らうことをめれば、お姉ちゃんは許してくれるかもしれない」


 そう考えた彼は原初大陸を離れて海の中に飛び込み、深海まで潜った。海溝の底に到達すると、さらに海底よりも深く──を目指して潜り続けた。


 彼はマグマの海も越えて、やがて静かな場所に到着する。その場所は不思議なことに青き地表の様子を観ることができ、生命いのちが生まれるさま、そして死んでいくさまを眺めることができた。


「我はここで見守ろう。生命いきものたちの行く末を」



***



 数百年が過ぎたとき──それは突然に起きた。


 巨大な隕石群が青き惑星に突き刺さり、すべてを焼き尽くしてしまったのである。


 海すらも蒸発してしまうほどの灼熱。人類はもちろん、それ以外の生命いのちも例外なく失われた。青い星は赤い星に変わり、生命いきものたちの棲家はただの無機物の塊に変わってしまった。


 やがて灼熱が冷めて、長い雨が降って、大地や海が元通りになっても……それは変わらない。


 そして今、かつて原初大陸があった場所に漆黒のドラゴンがいる。彼は地中を抜け出して、この場所に戻ってきたのである。


 彼女と再会するために──



***



【お説教タイム】


「みんなに散々迷惑をかけておきながら、唯一活躍できそうな場面で地中に引きこもって傍観していてはいけません。あの隕石群を止めることができたのはあなたくらいのものなのに……」


 少女の姿をした女神の前で、魔竜はに座っていた。何故なら大好きなお姉ちゃんに再会できたから──


「なんで嬉しそうにしているんですか! 私はこんなに悲しんでいるのに。私がはぐくんできた生命いのちが全部無くなってしまったというのに……」


 女神は魔竜の足元まで来ると、その爪先に触れる。その爪にポツポツと涙が落ちる。


「分かってはいるんですよ。遅かれ早かれ失われる楽園だったということは──それが今だったということだけで。あなたを責めても仕方がないことも」


 また彼女の涙が落ちる。ポツポツポツポツ。


「不貞腐れて、あなたのことを弟じゃないだなんて心にもないことを言ってごめんなさい。あなたは私の大切な弟です。私はあなたの『お姉ちゃん』です。二人きりになってしまったけれど、また喧嘩してしまうかもしれないけれど、ずっと一緒に生きていきましょう」


 そう言った彼女の足元で、一匹のカエルが跳ねた。

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