④ギャグパートにグロ演出を挿入してはいけません

 倒した勇者たちは残さず美味しくいただいております。食欲が旺盛なため、女神からは『全生命の敵』とも呼ばれております。


 原初大陸の真ん中にいるのはそんな存在。


──魔竜。あるいは人類最悪の敵。


 そして今日も彼の前には、彼を倒そうとする者たちの姿があった。


 聖ハリセン『ナンデヤネン』を携えた勇者ツッコミ。熱々のお湯『オスナオスナ』を常に持ち歩いている魔法使いアシスタント。耐久力だけは歴代最強の小太りの戦士オッサン。いつもにこにこ笑顔が素敵な僧侶キレイドコロ


 数々の無茶振りに耐え続け、ネタのつもりでついにこの場所まで到達してしまった彼らは、漆黒のドラゴンを前にして怯みまくっていた。


「無理だよ! こんなやつに勝てるわけないよ!」


「いいから行けよおっさん! 今までだって何回も死ぬような攻撃を受けたのに死ななかっただろ!」


「お前勇者だろ! お前が先陣切るんじゃないのかよぉ!」


「勇者が死んだらゲームオーバーだぞ!」


「あのぉ、お湯はここに置いておいてもよろしいでしょうかぁ。というかなんで私はこんなものを持ち歩いているんでしょうかぁ」


「…………」(無言にこにこしている僧侶)


 その様子を見て、魔竜は即座に面倒になった。


「…………」


 しかし女神の言葉──「もっと優しく撫でるように」と言われたことを思い出し、爪で叩き潰すのはめて、言われた通りに優しく彼らを撫でることにした。


 優しく(魔竜の主観)。


 そして殺戮の暴風が、ギャグ風のほのぼの雰囲気ごと斬って斬って斬り刻んで──識別不能な肉片だけを残した。


***



【お説教タイム】


「もう……今回はいつも以上に最悪です。コメディ路線の漫画で唐突に閲覧注意の残虐シーンを描くようなことをしてはいけません。漫画なら読んでいる人が鬱になります。ショックで仕事を休んでしまいます」


 少女の姿をした女神の前で、魔竜が地面に突き刺さりながら話を聞いている。なお突き刺さっているのはジャンピング土下座をしたあとだからである。


「ぐぬう。しかし何故か分からないが相手にするのが面倒だったのだ」


「気持ちは分かります。あの手の芸人さんは絡むだけでも罰ゲームみたいなものですし。でも体を張っている芸人さんには敬意を示さないといけません。あと『優しく』はあなたの主観じゃなくて、世界基準でお願いします」


「分かった。次からは気をつける」


 魔竜はそう言って謝った。人類最悪の敵は、女神の前では良き理解者なのであった。

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